2010/01/30

シンガポールの米国輸出管理セミナー


今週は、1週間シンガポールに出張で、1月28日にシンガポール税関主催の米国輸出管理セミナーでプレゼンスピーチをしてきました。(壇上のスピーカーが筆者です。)

1日フル(9時 - 16時くらい)のセミナーで、前半はBISのオフィサーから米国輸出管理EARの概略、後半の午後はITAR、シンガポール輸出管理の注意事項、民間各社からの実際の経験談スピーチ、といった流れです。私のプレゼンの部分は最後の経験談の部分で約15分でした。
参加者はシンガポール税関の人によれば約500人とのこと。

対象はシンガポールの企業なので、全て英語で行われました。日本語でも緊張するのに、英語でのスピーチとなるとそれ以上に緊張です。おかげで用意したメモをただ読んでいるような感じになり、なんだかパッとしないプレゼントなってしまいました。。。。

とはいえ、日本人が来て米国輸出管理についてプレゼンするのは珍しかったからでしょう。セミナーの最後では、日系企業のシンガポール法人で輸出管理に従事している方や、日本法人の輸出管理で困っている外資企業の方などなどからお話をお伺いすることもでき、有意義な1日となりました。
あと、良かったのは以前勤務していた会社のシンガポールの友人たちも偶然このセミナーに参加しており数年ぶりに再会できたこと。これは嬉しかったです!

セミナーではやはり聴講者としてではなく、スピーカーとして参加する方が自分のためになります。
今年は主に海外でのセミナーにプレゼンターとして話をする予定が多くありそうです。

2010/01/22

4月から全輸出者にCPを義務付け???

今日、海外の私の友人からある質問を受けました。それがちょっと日本の輸出管理に関して間違った情報でしたのでコメントしておきました。ある超大手のコンサルティングファームのTrade Bulletin ですが、日本の輸出管理動向に関して以下の文章が書いてありました。

Implementation of internal export control compliance programme (CP) requirement for all exporters

Under existing practice, only exporters who wish to obtain bulk export licenses are required to submit a CP to the Ministry of Economy, Trade and Industry for approval.
However, in the revision of the Japanese Foreign Exchange and Foreign Trade Law (FEFTL), effective from 1 April, 2010, all exporters will be required to implement CP...... (以下省略)

最近の外為法改正をきちんとフォローしていらっしゃる方ならすぐにお分かりかと思いますが、確かに今年の4月1日から、輸出者等遵守基準が、外為法第55条の10に基づいて実施されます。
しかしながらこれは全ての輸出者にCPを義務付けるわけではありません。あくまで守るべき基準を示しただけで、それを守らずに目に余るようなら指導・助言・勧告・命令と進んでいくわけですが、この文書を書いた人は、CPと遵守基準を少し混同しているようです。

また普通に考えればすべての輸出者にCPを義務付けてMETIに届出をさせるなんておかしいと思わなければいけません。外為法の第1条の「目的」である「対外取引の自由、必要最小限の管理又は調整」と齟齬をきたしそうですし、輸出に実質的に政府の認可が必要な発展途上国のような管理貿易になってしまいます。実務的に考えても本当にすべての輸出者にCP届出が必要となると、METIの窓口業務が破綻してしまいそうです。

これを読んだ海外の私の友人は、全輸出者にCPを義務付けなんて本当か? インパクトが大きすぎない?って聞いてきました。きちんと説明しておきましたが、超大手のコンサルなのに日本の輸出管理のニュースに関しては少し内容がお粗末すぎるなあと感じました。
とはいえ、人間誰でも間違いは必ずあります。私自身もセミナーやブログで間違ったことを言うでしょう。反面教師にしたいものです。

2010/01/21

認定輸出者自己証明制度について

今日は経済産業省の方から、原産地証明の認定輸出者自己証明制度についてお話をお伺いする機会がありました。

この制度は昨年2009年9月からの日本スイスEPAの導入により開始された制度です。

簡単に説明すると、EPAの特恵税率を適用するためには原産地証明書が必要ですが、日本ではこれを今までは日本商工会議所にて発行していました。(これを第3者認証制度と言います。)

これを輸出者が自社で発行する制度です。これにより証明書発行の毎の手数料とかリードタイムや手間が少なくなります。ただし初期登録の登録免許税として9万円がかかります。また有効期限は3年間なので更新が必要です。その更新手数料が5,000円必要です。ですので認定資格として半年で8回以上の実績が要件となっています。とはいえ利用件数が多くて申請が度々の企業にとっては朗報です。
もちろん違反や虚偽の申請があればペナルティがありますのでコンプライアンスをしっかりすることは重要です。

EUが締結しているFTAではこの制度は広く取り入れられています。日本スイスEPAは、日本が始めてヨーロッパの国と結んだEPAなので、この制度を初めて採用したのでしょう。
この制度の概要と手続きはMETIのweb site にとても綺麗な資料があるのでご覧下さい。

http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/epa/html2/2-torikumi3-switzerland.html

すでにこの認定輸出者の資格を取った企業さんは、数は多くはありませんが、実際にいらっしゃるそうです。

また、METIとしてもこの制度は広く活用を進めていきたいそうですので、今後締結されるEPAにも採用されることを期待しましょう。


2010/01/20

外為法の行政制裁

1月19日付けで経済産業省より、外為法に違反して北朝鮮に輸出した人に行政制裁の輸出禁止(16ヶ月)が科されたニュースリリースが出ました。この外為法第53条に基づく行政制裁は、違反した貨物のカテゴリー・輸出先だけでなく、全地域・全貨物が対象になりえますので、輸出企業にとっては第69条の6の罰金・懲役よりも怖くてインパクトがあると思います。
http://www.meti.go.jp/press/20100119002/20100119002.html

今回発表された行政制裁は「同法第53条第1項及び第2項に基づき」とあります。第1項と第2項の違いは要約すると以下のようになります。

第53条第1項: 第48条1項(貨物の輸出)の違反で最大3年間の輸出禁止
第53条第2項: 前項に規定する以外の貨物の輸出入の違反で、最大1年の輸出禁止

なので、通常、安全保障上の無許可輸出(第48条1項)の行政制裁なら第53条でも1項だけですが、今回は北朝鮮へのタンクローリーの輸出(大量破壊兵器キャッチオール違反)だけでなく、中古車やピアノの輸出も違反でした。
タンクローリーの輸出は外為法第48条1項(輸出貿易管理令第1条の”許可”を取らなかった違反)で、
中古車やピアノは、第48条の第3項(輸出貿易管理令第2条の”承認”を取らなかった違反)となります。

もし承認をとらずに輸出の行政制裁(この場合中古車とピアノなど)だけなら最大1年ですが、今回はタンクローリーが第48条1項の違反なので最大3年まで、で、結局16ヶ月(1年と4ヶ月)ということになりました。

輸出管理を勉強するときは、METIからのアナウンスの、第xx条の第xx項に基づいて、をよく理解して読むと法令の正確な理解に役立ちます。

2010/01/18

米国のFirst Sale ルール

米国の”Washington Tariff & Trade Letter" 1月4日号によれば、"First Sale" 評価ルールは産業界がクレームしたほど実際には使用されていない、という記事がありました。
これだけ読んでも話の背景を知らないと??な記事です。この話の経緯は以下のようになります。

米国のFirst Saleルールとは、1996年から採用されたルールで、ちょっと乱暴な説明ですが、こんな感じです。米国の輸入者が貨物を輸入する際に、実際に輸入者が最後の売り手に支払う価格ではなく、製造者が例えば仲介者に支払う価格を米国への輸入申告価格とし、故に関税が安くなる、というルールです。

例えば中国の工場で作られ米国へ輸出される貨物を、中国の製造主から直接買うのではなく、日本の商社を通じて米国の輸入者が買うケースです。実際には日本の商社は仲介コミッションを得るので中国の製造主が売る価格 (First sale) は安いはずです。日本の商社に支払う価格 (Last sale) ではなく、 このFirst sale 価格を基準に関税をかけるというやり方です。もちろんいくつか満たすべき条件はあって、販売は独立当事者間価格 (an arm's length price) であり、貨物が直接米国へ輸出されるとかあるのですが、米国の輸入者にとっては関税が安くなるので良い話です。

このFirst sale ルールを廃止しようという話がCBP (Customs and Boarder Protection)から2008年1月に出されていました。ところが米国の産業界は、これを廃止すると関税が高くなり輸入コストが上昇するので、当然ですが反対大ブーイングの嵐です。それで2008年8月にはいったんCBPはこの話を引っ込めることになり、一方、米国議会は暫くどのくらい実際に使用されているのか統計をとって観察しよう、という命令を出していました。

ここでITC (International Trade Commission) が昨年12月23日付けのレポートで、そのFirst sale ルールの実績を発表しました。それによると2008年9月から2009年8月までの間の統計では、First sale ルールを使った輸入者は全米で23,520の輸入者のみで、これは全体の8.5%だそうです。また、金額ベースでは2.4%に留まり、クレームの声が大きかった割には実際の数字はそんなに大きくないね、という話です。First sale 反対者の多くは、関税率の比較的高い製品であるアパレルや靴を扱う業者や小売業界です。この話が今後どう進展するのかcustoms compliance の立場から非常に興味がありますので注視していきたいと思います。

2010/01/15

環境と貿易

昨日は、「環境と貿易に関するシンポジウム」を聴講してきました。
企業の実務家にとっては環境と貿易といってもまだピンとこないかもしれません。
しかし環境問題はWTOでもプライオリティの高い事項であり、専門家の方々を巻き込んで真剣な議論がなされています。将来的にどう貿易実務に関連してくるのか、いくつか実例とその問題点をあげます。

  • 環境製品と関税: 環境に良い製品の関税を撤廃あるいは安くする。環境に悪いあるいはCO2排出の多い製品の関税を高くする。これは環境保護の方向性には合致する政策ですが、実務的にどうするのかは非常に頭の痛い問題です。何を基準に環境に良い製品と悪い製品を識別するのか? CO2排出の多い国の原産品は関税を高くする? エコフレンドリーな製品の性能やスペックで関税を決めるのか? 環境関連の用途やプロジェクトに使用されるなら既存製品も関税を安くするのか? ある国で環境関連で補助金が出たら、その国からの輸出製品に対して相殺関税を課すことを認めるのか? 悩みは尽きません。
  • Carbon Leakage (炭素漏出): 排出規制が厳しくない地域に産業が移転してしまうこと。結果として地球全体の排出量が増加する可能性もあります。現在は税金が安い国に産業が移転することはよくありますが、同様にサプライチェーンが環境規制によって影響を受けることも考えられます。
  • HS code も定期的に改正があり、前回のHS2007の改正はちょうど3年前になりますが(オヤジになると時間が過ぎるのが早いので)記憶に新しいところです。WCOのアナウンスでは次回は2012年です。ここでもモントリオール議定書の ozone depleting substancesのsub-heading が新たに追加されることが決まっているなど、環境問題はHS classification の変化にもつながっていくでしょう。
まだまだ国際的な枠組みをどう作るか議論がされている段階ですので、すぐに実務でどう対処するとかいう話ではありませんが、将来を見据えて気長にwatching していきたいと思います。

2010/01/14

Voluntary Self-Disclosures

Voluntary Self-Disclosures ("VSD")という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。
違反した場合の自主開示のことで、輸出管理の世界では、特に米国で、多く見受けられます。

VSDの概要についてはBISのweb site に出ています。BISも、企業で違反があって認識した場合には、このVSDを推奨するという立場です。これによりペナルティもかなり減額されることになります。(BIS affords the submission of a VSD "great weight" in assessing and mitigating the penalty)
http://www.bis.doc.gov/complianceandenforcement/index.htm#vsd

実際にはVSDを提出しても全てがペナルティというわけではないようです。
(FY2005の例: 全体の97%は違反なし又は警告書ですみ、内訳は55%が違反認定なし、42%が警告書のみ)

ペナルティとなってしまった場合の事例も企業名・金額と共に公開されています。この数字を分析してみると、どのくらいVSDによってペナルティ金額が減額されるのか様子がわかります。実際に支払った金額とそのケースでのMaximum ペナルティの金額を比較してみました。

  • FY2007: ペナルティ17件で、VSDにより平均でMaximum ペナルティの33%まで減額
  • FY2008: ぺナルティ12件で、VSDにより平均でMaximum ペナルティの37%まで減額
  • FY2009: ペナルティ17件で、VSDにより平均でMaximum ペナルティの19%まで減額
    (2009年の数字が低いのは1件だけ3%まで減額されたケースがあるからです。これを除いた16件の平均では平均34%となります。)

一般的にVSDによってざっとペナルティは半分になると言われてきましたが、過去3年分のケースを分析すると、概ね平均30%台ですので、それは裏付けられたと言えるでしょう。もちろんケースバイケースであり、VSDにも関わらずMaxの96%のペナルティがあったケースもあります。これはイラン向けという案件の機微度、知りながらに違反した、かつVSDで嘘や不正確な証言をしたことなどが原因です。

さて日本の輸出管理でのVSDはどうなっているのでしょう? 私の知る限り、米国のような数字の統計は経済産業省からは出ていませんが、ガイドラインはあります。

http://www.meti.go.jp/policy/anpo/kanri/jishukanri/main.html
(不正輸出の通報関連  の 安全保障貿易に関する不正輸出の審査手続き pdf )

日本でも内部監査等に基づく自主的通報は、処分又は調査内容において、何らかの考慮はされるようです。経済産業省の事後審査に協力的か否かも、処分決定の考慮要因となります。