2010/08/23

タイの地域統括本部 (ROH) 税制優遇を拡大

8月23日付けの日本経済新聞で、タイとシンガポールが多国籍企業の地域統括拠点の誘致へ本格的に動き出したとの記事があった。税制優遇の拡大により、加速するアジアの地域経済統合をにらみ、タイとシンガポールで主導権を争う構図である。

この日経新聞の記事は、タイの優遇措置と、シンガポールとの競争の構図を簡潔にまとめてある良い記事である。しかしタイの実際の優遇措置の適用条件は複雑であり、よくよく条件を確認しておく必要がある。以下は今年6月に筆者が翻訳した弊社のニュースレターである。ご興味にある方は参考にされたい。

(英文オリジナル: http://www.bryancavetrade.com/sitebranches/publications/docs/ATA-TH-ROH-May-27-2010.pdf )

タイの新ROHパッケージ

2010年2月10日に開催されたROH(Regional Operating Headquarter: 地域統括本社)の設立に関するセミナーに引き続き、政策開発小委員会はROHの奨励についてのフォーラムを2010年5月24日に、タイ首相のアピシット・ウェッチャシィーワ氏の名前で開催し、新しいROHの利点と条件提案についてのフィードバックを得ることができました。

タイROHプログラムをより魅力的なものにするために、新しいROHパッケージでは海外で得られた適格収益についての制限条件が取り外されました。さらに少なくとも3ヶ国以上の国外企業へのサービスの提供という必須条件も緩和され、これを逐次条件へと改定されました。(例:ROHは初年度は少なくとも1カ国で一つの会社へのサービス提供、3年以内に2カ国へ、5年以内に3カ国へ)それに加えて、ROHが関わる原材料・部品・完成品の調達サービス活動の規定範囲を、関連企業への原材料・部品・完成品の調達から得る貿易収益を含むように範囲拡大がなされました。

税金優遇の面では、海外および国内の会社への規定されたサービス提供から得る収益への法人税率が、「10% - 30%」から「0% - 10%」のレンジへと低減されました。しかしながら、この新ROHパッケージでの法人税の優遇措置は10年の期間制限があり、ROHの規定の条件さえ満たせば15年まで延長できるものの、それには少なくともタイで年間に少なくとも1500万バーツの出費を行う、又は3000万バーツの投資を行わなければなりません。また、ROHの従業員には個人所得税の優遇があり、もしROHが海外企業へのサービス提供で得た収益がROHの総収入の少なくとも50%以上あれば、8年間の通常の累進税率の代わりに、15%のフラットレートが適用されます。しかしながら、この新パッケージは、海外の関連企業や支社からの利子収入とロイヤルティー収入への税率低減は提供していません。

新ROHパッケージについては、個人所得税の優遇措置として、外国駐在員の個人所得税フラットレートや海外での収入についての基準などについて幅広く議論されました。小委員会はこれらの事項について再検討する旨合意しましたが、副蔵相であり小委員会の議長のプラディット・パタナプラシット氏は、この新ROHパッケージは2010年6月1日から有効であると述べました。興味深いことに、この新パッケージは既存のパッケージとの入れ替えではなく、両方とも存続し、企業が選択できるようになっています。

フォーラムでは、新ROHパッケージのいくつかの基準については明確になっていない部分もありましたが、より緩和された基準と改善された利点も出揃い、既存の企業にも新規の企業にも両者に魅力的な機会を提供するものですし、タイでのROHオペレーション企業数の増加を期待できるものと思われます。また現在のFTA環境の活用も視野に入れ、ROHの利用を慎重に計画することにより、タイのみならずその他地域も含めて、ビジネスには必ずや有益なものとなることでしょう。

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