2010/06/30

ATAカルネの運用変更

商品見本や展示会用の物品を海外に持ち出して、日本へ持ち帰る際にはATAカルネを利用されていらっしゃる方は多いかと思います。
筆者も昔はよく利用する機会ありましたし、日本商事仲裁協会への申請業務も行っていました。

このカルネは一言で言えば、「一時輸入用インボイスの回数券」です。
外国で一時輸入の際にかかる関税などの税金を払わずに、持ち帰りを前提にしたものです。

これが今後は外国での販売、つまり外国で消費する、ことが可能となりました。
もちろんその分の現地でかかる税金は支払う必要がありますが、その納税証明書を後でカルネと共に日本商事仲裁協会に返還すればOKとのこと。
やはり、現地で実際に商談した際に、その場で買いたい、売ってくれという話になることは多いです。
弾力的な運用になったということですね。

参照: http://www.jcaa.or.jp/carnet-j/about.html

2010/06/28

世界のAEOの比較情報

6月24日と25日付けで立て続けにEUとカナダとのAEO相互承認がそれぞれ発表されました。
このニュース自体は財務省や税関のホームページを見ると載っているので、多くの方がすでにご存知だと思います。

海外の友人とこの件について情報交換をしていたら、とても良いweb siteを教えてくれました。
世界のAEO情報が比較チャート形式で載っている約40ページのpdf です。 内容はWCOによって書かれたもので、web site はフィンランドの税関になります。
http://www.tulli.fi/fi/yrityksille/asiakkaana_tullissa/AEO/kiinnostuitko/WCO_kooste.pdf

日本のAEO情報は税関が積極的に発信しているので簡単に情報収集できますが、世界各国のAEO情報が比較一覧形式になっているこの資料はなかなか貴重です。

2010/06/25

米国EAR 暗号規制の変更

米国EARの暗号規制が緩和され変更が予定されています。
http://www.federalregister.gov/OFRUpload/OFRData/2010-15072_PI.pdf

おそらく、まもなく発行されるFederal Registerに載ると思われます。
まだよく読んでいないのですが、主な変更内容は以下のようです。
  • ENCの運用の変更(緩和ですね)、例: 30 days rule の変更
  • Category 5 part 2 (5A002 や 5D002 など)に“ancillary cryptography”の除外規定の導入

“ancillary cryptography”は大きな影響があるでしょう。Wassenaar dual-use list の2009年12月の合意内容ですが、米国はまだEARに反映していませんでした。(日本は2010年4月に反映スミ)

(追記)

6月25日付けでBISよりプレスリリースで本件発表がありました。また、EARのCategory 5 - part 2も 6/25付けで中身がすでに変更になっています。

Summary: http://www.bis.doc.gov/news/2010/encryption_rule_summary.pdf

2010/06/21

FCPAの執行増加に注意

FCPA (The Foreign Corrupt Practices Act - 連邦海外腐敗行為防止法) の執行が近年目に見えて増加しています。

2004年からの統計によれば、法務省のFraud Section は37件の違反執行により、合計で15億ドル以上の罰金を科しています。
さらに注目すべきは2004年からの個人の違反執行件数は81人ですが、そのうちの46人は2009年と2010年前半のみで挙げられています。この期間の違反執行の半分以上がここ1-2年ということです。

FCPAが適用される範囲は極めて広く、米国系外資系企業で働く日本人はもちろん、日本企業でも米国でADR(米国預託証券)を発行していれば、例えば米国外のオペレーションでの不正でもFCPAの対象になります。また、海外企業が送金や支払いに米国系金融機関を使用した場合でも適用されます。

法務省では、社内でのコンプライアンスプログラムの実質的な運用と、違反を社内で発見した場合は速やかにVoluntary Disclosure をすることを指導しています。

おそらく米国系外資系企業で働く人間は、入社時の誓約書でもあれば、そこにFCPAを遵守することに同意する、といった文言があると思います。あらためて見直してみて認識を新たにするのも良いでしょう。

エリトリアを通常兵器CA国連武器禁輸国に追加(確定)

以前に当ブログで取り上げた、4/29付けのパブリックコメントで出されていた本件が確定して発表されました。
http://tradecomplianceoffice.blogspot.com/2010/05/ca.html

公布は2010年6月23日、施行は2010年9月1日です。

http://www.meti.go.jp/press/20100618001/20100618001.html

エリトリアを輸出令別表第3の2(国連武器禁輸国)に追加することにより、通常兵器キャッチオールで用途案件に該当する場合には、輸出許可申請が必要になります。

2010/06/17

AJCEP フィリピンもいよいよ発効

6月16日付けで外務省と経済産業省から、AJCEP (日アセアン包括的経済連携協定)がフィリピンとの間でいよいよ発効する旨の発表がありました。

効力発効は2010年7月1日からです。

これでAJCEPでまだ発効していない国は残りインドネシアだけとなりました。
他のアセアン諸国は、シンガポール、ラオス、ベトナム、ミュンマー、ブルネイ、マレーシア、タイ、及びカンボジアですが、すでに効力が発生しています。

2010/06/16

GEICOのペナルティから学ぶ

GEICO (GEICO General Insurance Company)という米国の保険会社は、日本ではあまり知名度はないかもしれません。ただ、株式投資が趣味の人にはウオーレン・バフェットが投資した会社ということでご存知の方もいらっしゃるでしょう。このGEICOがOFACから違反のペナルティを受けています。
オマハの賢人といわれるバフェットが投資した会社だからといって、優れたコンプライアンスを有しているとは限りません。また保険会社ですので、もちろん物の輸出で違反をしたわけではないのですが、このケースがおもしろいので取り上げます。
http://www.treas.gov/offices/enforcement/ofac/civpen/penalties/06032010.pdf

違反の内容は、SDN List に載っているSpecially Designated Narcotics Trafficker (“SDNTK”)の個人に車の保険証券をOFACのライセンスなしに販売したということです。民事の違反罰金はUS$11,000 です。

教訓となるのは以下の文面です。
GEICO does not screen its existing policyholders database for SDNs as the SDN list is updated but only on an annual basis. GEICO has committed to making improvements to remedy this gap in its OFAC compliance program.

顧客データーベースのスクリーニングの頻度が1年に1回以上はしなかったということでしょうか。
通常、米国のこの種のリストは頻繁に追加・変更などありますので、既存顧客のデーターベースもそれに合わせてチェックするべきでしょう。あまり頻繁な見直しも業務の負担となりますので、バランス感覚が必要でしょうが、私の以前いた会社では半月に1回のスクリーニングとしていました。

ところで、このOFACのSDL Listですが、この中に日本に居住する対象者も多いことをご存知でしょうか?
http://www.treas.gov/offices/enforcement/ofac/sdn/

ダウンロードするとpdfで455ページになりますが、pdf の検索機能で "Japan" で検索すると日本にある会社もたくさん出てきますのでお試し下さい。
キューバ関連の制裁でリストに載ったことろが多いようです。
米国系外資企業の方は国内販売でもご注意あれ。

2010/06/15

香港、今年二度目の輸出管理リスト改正(続編)

4月30日に、香港で輸出入管理コントロールリストの改訂が発表されました。
http://tradecomplianceoffice.blogspot.com/2010/04/blog-post_30.html

その時点では、いつから施行されるのか不明でしたが、香港のTID 当局 (Trade and Industry Department) から6月14日より施行との発表がありました。もう新リストで施行なのですね。
http://www.stc.tid.gov.hk/english/circular_pub/2010_stc04.html

2010/06/10

米国輸出管理改革案Update

業界紙 Inside U.S. Trade の記事によると、米国輸出管理の改革案のUpdate として、ホワイトハウス高官とのインタビューで、省庁間の改革Updateが近いうちに発表される模様。主なものは:

  • BIS, OFAC, と DDTCの様々なリストを一つにする件の詳細
  • シングルITシステムはDDTCのシステムになる模様
  • The Nuclear Regulatory Commission はsingle export agency からは外れるそう
  • 「米国人」や「輸出」の定義が (EARとITAR)で共通の定義となる
  • シングルリストはUnited States Munitions Listとなり、Dual-Use listはそこの追加され、商務省のCCLは消える模様

2010/06/05

マレーシア、トルコとFTA交渉を開始

ニュース報道によれば、マレーシアとトルコが二国間のFTA交渉を正式に開始したそうです。
5月31日と6月1日に最初の交渉がトルコのアンカラで行われたとのこと。

両国はこの交渉を2011年の前半にも終了させる意向で、3か月ごとに交渉を行う。
次回の交渉は8月の23日 - 25日の予定。

2010/06/04

De Minimis計算をしてみよう!(初級編)

米国の再輸出規制でやっかいで複雑なのはDe Minimisルールです。今回はこれを易しく理解できるようケーススタディを通じて解説してみます。

(状況)
あなたはグローバル企業のアジアパシフィックのトレードコンプライアンスマネージャーです。会社は中国に工場を持っていて、部品を世界各地から調達、最終製品を世界各地に出荷しています。
さて今回、中国の工場でハイパワーレーザーポインターを作ります。この製品は米国原産の6A005の部品を使用します。ただしこの6A005の部品は米国からは許可例外のCIVで輸出されています。
また、この製品は中国の工場で米国原産の技術で作られた4A994のコンピューターチップを含んでいます。また中国原産のEAR99のプラスチックケース、中国原産のEAR99のガラスレンズ、中国原産のEAR99のスイッチ、シンガポール原産のEAR99のロングライフバッテリー、ベトナム原産のEAR99のスクリューが使用されます。

(前提条件: 価格)
- 米国からのレーザー (6A005) は1,000個当たり$8,800で、輸送・保険料はそれに追加で$200
- シンガポールからのバッテリーは中国へのLanded cost で100個当たり$3,900
- 4A994のコンピューターチップは1個当たり$8
- プラスチックケースは1個当たり$0.5
- ガラスレンズは1個当たり$0.5
- スイッチは1個当たり$1.80
- スクリューは1製品に2個必要で2個で$0.20
- プロフィットマージンは1製品に$22、でポインター製品の販売価格は$81

(状況と質問)
- 米国原産比率 (6A005)は $9/$81で、11.1%となる。
- 営業のマネージャーからあなたへの質問です。この製品は輸出ライセンスなしにインドへ輸出できるか? また、もし比率が25%を超えていればどうか?
- 引き続き質問、この製品をイランで売りたいんだけど可能か? もし販売価格を$91にすればどうか?
- この製品をキューバ、北朝鮮、スーダン、シリアへの輸出はどう?

(答え)
- はい、インドへは輸出可能。6A005はCIVも適用できるし、GBSも適用可能。(インドはカントリーグループB) また、インドへは米国の原産比率が25%を超えても可能。
- イランへはDe Minimis は10%が境界線。この製品は11.1%ということで、イランへの輸出は不可。しかし、販売価格を$91にすれば10%を切るので De Minimis基準はクリア。ただし以下を注意。
- その他のATの国もDe Minimisは10%がライン。なので販売価格$81では輸出不可。また、販売価格$91なら、中国の企業が行うのであれば可能。ただしイランやスーダンへは米国人が、その中国企業の行為を手助けするということであればOFACの禁止事項に抵触するので不可。
(Note: General Prohibition in OFAC 560.420 note 1) 


De Minimis のケーススタディとしては内容は単純で初級編なのですが、前提条件だけ実際ありがちな状況にするために少し複雑にしてみました。書いてて少し疲れました。。。
まあこのようなスタディは自宅で酒を飲みながらすることはお勧めしません。
また、このケーススタディはDe Minimis の計算にフォーカスした空想問題で、実際の輸出ではエンドユーザースクリーニングなどその他の条件もありますので、ここから推論して実際のケースに適用するのは止めてください。あくまで理解を助けるトレーニング目的のためのものです。ついでにルールは時を追って変わりますので必ず最新のルールを参照を。