2011/05/19

リスクマネージメントのセンス

5月19日の日本経済新聞朝刊の記事の中に、日本企業の経営に関連して以下のような内容の記述がありました。

「現場の危機対応力は日本企業は群を抜いて優れているが、将来の危機を予測して周到に備える姿勢は弱い。」
「日本企業は対応可能な危機しか起こらないと考えたがる。」

ようはリスクマネージメントのセンスがいまひとつ、かつ戦略的に物事を考えて経営に反映していく力が弱い、ということだと思いました。

安全保障輸出管理のICP(社内コンプライアンスプログラム)も、物流管理の観点からだけでなく、全社的なリスク管理マネージメントの文脈で語られることが多くなりました。
例えば非該当の製品が大半で、輸出令別表一リスト規制品の輸出許可を取得して輸出するケースは年間数えるほどしかない企業が、ICPを作り社内で運用し、METIに届出して一般包括を取得するのはどうなのでしょうか?

近視眼的にメリット・デメリットだけ言えば、毎年7月のチェックリスト提出や、ICPに伴う社内監査、METIへのExposure が増すなど、かえって面倒なことの方が多いという考え方もあるかもしれません。
しかし今回の震災のように想定外のリスクが振りかかってきた場合はどうでしょう?
普段から何がしかのリスクマネージメントを行ってきた企業と、目先の手間とメリットだけで判断して何も行ってこなかった企業との対応力の差は大きなものがあるのではないかと思いました。

個人的には、古い話で恐縮ですが、2000年のY2K問題で米国本社から言われて万が一のための Contingency Plan を作らされた経験がありました。言われてしょうがなくやったという感じですが、万が一電気がストップしたらとか倉庫のオペレーションがストップしたらとか、いうシナリオでした。今年の3月11日の震災の際にはまさにそういったことが現実に起きたわけで、そのときの経験が実は役に立ったと思っています。(そのときもっと真剣に関わっていればよかった。。。)

2011/05/11

Greenfield study?

英語を日本語に翻訳していて、どう意訳したら一般の人にわかりやすくなるかなと思案することがあります。
Greedfield study っていう言葉にぶつかりました。
グリーンフィールド研究って、カタカナにしたところで一般の人には殆どわからないでしょう。
最初は環境に関することかな?って思いました。
ところがこれは投資がらみの文脈で以下のような意味になります。

■グリーンフィールドとは

グリーンフィールド投資とは、外国に投資をする際に法人を新しく設立して、設備や従業員の確保、チャネルの構築や顧客の確保を一から行う投資の方式のことです。グリーンフィールド投資は、文字どおり、何もない野原に買い取って、位置から建物を作り上げていくような投資になります。

なので、新規法人設立の研究、っていう訳にしときました。環境問題の研究なんて訳したらえらい恥をかくところでした。

2011/04/25

輸出管理保冷の英文訳

以前に筆者はブログか何かで、輸出管理法令の英文訳は、法律と令しか存在しない、つまり外為法と輸出貿易管理令、外国為替令、しかない、ということを書いた覚えがあります。
なので輸出管理実務に実際に必要な省令や通達は英文訳がないので不便だなあ、ということを言いたかった訳です。

ところが省令も以下のものが「日本法令外国語訳データベースシステム」に掲載されていることを最近発見しました。

- "貿易外省令"  つまり貿易関係貿易外取引等に関する省令 (Ministerial Ordinance on Trade Relation Invisible Trade, etc.)
- "貨物等省令"  つまり輸出貿易管理令別表第一及び外国為替令別表の規定に基づき貨物又は技術を定める省令 (Ordinance of the Ministry Specifying Goods and Technologies Pursuant to Provisions of the Appended Table 1 of the Export Control Order and the Appended Table of the Foreign Exchange Order)
 - 輸出貿易管理規則 (Export Trade Control Ordinance)

ただし注意しなければならないのが、これらは最新の変更を反映していないという点です。
例えば貿易外省令は翻訳日が2009年5月です。ですので外為法の改正で現在は大きく変更になっっている第9条が古いままです。
また、貨物等省令も翻訳日が2009年10月なので、最新のリストの2010年4月のものではありません。また、貨物等省令は1年に1回くらいの頻度で変更になり、近いうちにまた変更になります。

とはいえ、変更がない部分などでは英語標記をチェックする上で大変参考になります。

2011/04/20

HS code 表をiPhoneで持ち歩く

HS code 表をiPhone にダウンロードできるアプリがあるので早速試してみました。
これは日本語版は存在せず、英語版のみになります。115円です。
http://www.hscodehandbook.com/

ただしHSコードだけで、税率はありません。HSコードは6桁までの情報です。

用語で検索もできます。しかし用語はあいまい検索ではなくexact match です。
つまり、HS code 8471 にあたるPCやコンピューターなんかも、"PC" とか "computer" では検索できず、"automatic data processing machine" というどれかの言葉でないと検索できません。

iPhone で常にHS codeを持ち歩いて参照できると便利なことってあるのでしょうか?
しばらく使って試してみたいと思います。

2011/04/15

アジアパシフィックの本部として最適の都市は?

MNC (Multi National Company) のアジアパシフィック (AP) の本部を置く都市はどこが一番人気があるのでしょうか? ある欧米の商工会議所が調査を行い、その結果をたまたま入手しました。
発行は2011年ですので調査の元データーはおそらく2010年のものでしょう。

調査の項目や基準は、以下の通りです。
  1. 顧客やマーケットに近いこと
  2. 法制度環境の友好度
  3. 安定した政治環境
  4. 友好的なビジネス環境
  5. 有利な税制環境
  6. 優れた人材のアクセス環境
  7. オペレーションコスト
  8. 透明性がありマーケットアクセスが容易
  9. 生産設備や工場へのアクセス
  10. ディストリビューションチャネルへのアクセス
以上のポイントを総括的に評価すると、ベスト10は以下の都市になるそうです。
  1. 上海
  2. 香港
  3. シンガポール
  4. 北京
  5. 広州
  6. 深セン
  7. 東京
  8. クアラルンプール
  9. バンコク
  10. ソウル
ベストスリーの都市は、ああやっぱりね、という感じですし、実際にAPの本部を置く企業は多いです。
広州や深センなど中国の都市が東京より上なのは、やはり中国の勢いを感じます。
この調査のデーターはおそらく2011年3月の東日本大震災より前でしょうから、東京の位置づけは7位から今後落ちていくと思われます。地震以降、拠点を東京から大阪あるいはアジアの他の都市に移した企業も多いと聞きます。

私見ですが、東京へAPの本部を誘致を本気で考えるなら以下の3点の改善は必要でしょう。
  1. マーケットの拡大や技術革新の展望を示す
    人口が減少し、マーケットが小さくなっていく場所に好き好んで投資を続ける企業はありません。移民も規制されていますし、様々な考えやバックグラウンドを持った人材が衝突して生み出すイノベーションも期待できない。
  2. 透明性のある法規制、特に不透明な運用をどうにかする
    非関税障壁、日本独自の基準のわかりにくさ、恣意的で神経質かつ細部にフォーカスしすぎの運用、英語での法令が手に入りにくい、など
  3. 人材の不足、優秀な人材へのアクセス改善
    どんな分野にしろグローバルに通用するビジネススキルをもった人材で、英語のみで業務が遂行できる人材の絶対数が国力と比較して少ない。いても大企業に偏っており人材の移動が少ない。
企業を誘致するために高い日本の法人税を5%程度減らす話も、地震の後で立ち消えになりそうです。震災で東京の魅力度がどんどん減っていくことを危惧します。