2010/08/26

JETRO貿易投資白書が無料でダウンロード

JETRO貿易投資白書は毎年出版されており、仕事に役に立つ資料だったので購入していました。
(以前は3,900円 + 税)

現在の2010年版は「ジェトロ世界貿易投資報告」となっています。
なんと今はweb から無料でpdf でダウンロードできます。
また使い勝手がいいことに、章ごとや国・地域ごとに細かくダウンロードできます。 この国の情報だけ知りたい!って人には便利です。
JETRO様どうもありがとうございます!

http://www.jetro.go.jp/world/gtir/2010/

2010/08/24

タイ、付加価値税をさらに減税

8月24日付けの日本経済新聞によると、タイ経済のGDPはデモの影響で一時減速、4-6月は年率では1%成長止まりとのこと。
4-6月の実質GDPの伸び率前期比は0.2%増で、年率換算で14%前後と見られた1-3月期から一転して1%程度の低成長にとどまったもよう。これは3-5月にバンコックで発生した反政府デモにより観光業が打撃を受けたことが響いた。ただし輸出は好調でこれが国内の打撃をカバーしている構図。

このような状況を受け、タイ政府は付加価値税の減税措置を決めている。

2010年8月3日のタイ政府内閣決議により、内閣は財務省が提案した付加価値税の削減対策延長案を承認し、法制度委員会事務局に緊急案件として提出した。
財務省が提案したその対策では、国内経済の低迷を克服するために以前から実施されている付加価値税対策 (付加価値税を10%(地方税を含む)から7%(地方税を含む)に削減)を延長する。
この措置は2010年9月30日までであったがさらに2年間延長する。加えてさらなる付加価値税削減を行い、6.3%とする。

今回の対策の主な内容は、以下の通り。
1. 2010年10月1日から2012年9月30日まで、一時的に付加価値税を6.3%と、さらに削減すること。
2. 2012年10月1日からは、付加価値税を10%に戻さず、9%とすること。

今年に入ってのアジアパシフィック各国とのFTA/EPAの発効もあり、タイは輸出は好調ながら、国内経済は回復途上との認識で、引き続き景気刺激策を取り続ける。

2010/08/23

タイの地域統括本部 (ROH) 税制優遇を拡大

8月23日付けの日本経済新聞で、タイとシンガポールが多国籍企業の地域統括拠点の誘致へ本格的に動き出したとの記事があった。税制優遇の拡大により、加速するアジアの地域経済統合をにらみ、タイとシンガポールで主導権を争う構図である。

この日経新聞の記事は、タイの優遇措置と、シンガポールとの競争の構図を簡潔にまとめてある良い記事である。しかしタイの実際の優遇措置の適用条件は複雑であり、よくよく条件を確認しておく必要がある。以下は今年6月に筆者が翻訳した弊社のニュースレターである。ご興味にある方は参考にされたい。

(英文オリジナル: http://www.bryancavetrade.com/sitebranches/publications/docs/ATA-TH-ROH-May-27-2010.pdf )

タイの新ROHパッケージ

2010年2月10日に開催されたROH(Regional Operating Headquarter: 地域統括本社)の設立に関するセミナーに引き続き、政策開発小委員会はROHの奨励についてのフォーラムを2010年5月24日に、タイ首相のアピシット・ウェッチャシィーワ氏の名前で開催し、新しいROHの利点と条件提案についてのフィードバックを得ることができました。

タイROHプログラムをより魅力的なものにするために、新しいROHパッケージでは海外で得られた適格収益についての制限条件が取り外されました。さらに少なくとも3ヶ国以上の国外企業へのサービスの提供という必須条件も緩和され、これを逐次条件へと改定されました。(例:ROHは初年度は少なくとも1カ国で一つの会社へのサービス提供、3年以内に2カ国へ、5年以内に3カ国へ)それに加えて、ROHが関わる原材料・部品・完成品の調達サービス活動の規定範囲を、関連企業への原材料・部品・完成品の調達から得る貿易収益を含むように範囲拡大がなされました。

税金優遇の面では、海外および国内の会社への規定されたサービス提供から得る収益への法人税率が、「10% - 30%」から「0% - 10%」のレンジへと低減されました。しかしながら、この新ROHパッケージでの法人税の優遇措置は10年の期間制限があり、ROHの規定の条件さえ満たせば15年まで延長できるものの、それには少なくともタイで年間に少なくとも1500万バーツの出費を行う、又は3000万バーツの投資を行わなければなりません。また、ROHの従業員には個人所得税の優遇があり、もしROHが海外企業へのサービス提供で得た収益がROHの総収入の少なくとも50%以上あれば、8年間の通常の累進税率の代わりに、15%のフラットレートが適用されます。しかしながら、この新パッケージは、海外の関連企業や支社からの利子収入とロイヤルティー収入への税率低減は提供していません。

新ROHパッケージについては、個人所得税の優遇措置として、外国駐在員の個人所得税フラットレートや海外での収入についての基準などについて幅広く議論されました。小委員会はこれらの事項について再検討する旨合意しましたが、副蔵相であり小委員会の議長のプラディット・パタナプラシット氏は、この新ROHパッケージは2010年6月1日から有効であると述べました。興味深いことに、この新パッケージは既存のパッケージとの入れ替えではなく、両方とも存続し、企業が選択できるようになっています。

フォーラムでは、新ROHパッケージのいくつかの基準については明確になっていない部分もありましたが、より緩和された基準と改善された利点も出揃い、既存の企業にも新規の企業にも両者に魅力的な機会を提供するものですし、タイでのROHオペレーション企業数の増加を期待できるものと思われます。また現在のFTA環境の活用も視野に入れ、ROHの利用を慎重に計画することにより、タイのみならずその他地域も含めて、ビジネスには必ずや有益なものとなることでしょう。

2010/07/09

マレーシア Strategic Trade Bill 2010の概要

今年4月に発表されたマレーシアの輸出管理法、Strategic Trade Bill 2010 ("STB")の概要が判明しました。

  • リスト規制: EUのリストを採用予定
  • キャッチオール規制: リスト規制品以外の品目で導入する
  • 幅広い規制のスコープ: 通過、積み替え、仲介行為も適用対象
  • 違反への厳しいペナルティ: 最大死刑
  • 導入時期: 2010年12月の予定

マレーシアにて輸出オペレーションを行っている企業は、今年12月から対応できるよう準備が必要となるでしょう。

まだ適用除外の運用、公的な該非判定のサポート、trade facilitation などの詳細が明らかではありませんが、上記を見る限りシンガポールが2008年1月から導入したレベルを目指しているような印象を受けます。

2010/07/08

CEPT フォーム D を2010年7月1日よりATIGA フォーム Dに切替

2010年5月17日よりASEAN物品貿易協定 (ATIGA)がAFTAを継承し有効になったため、10ヶ国のASEAN諸国ではAFTA/ATIGAの特恵関税を利用する際にはCEPTのフォームDの代わりに新しい原産地証明書 (ATIGAのフォームD) を使用しなければなりません。 よってタイ国と他のASEAN諸国では、2010年7月1日をもって新しいATIGAのフォームD を発行・承認することに合意しましたが、便宜措置として輸出入者は2010年11月6日まではCEPTのフォームDを使用することもできます。

実際、外国貿易局ではCEPTフォームDをATIGAフォームDに切り替え発行する準備はすでに出来ています。しかしASEAN諸国の一部ではこの新システムに対応するには依然として準備の時間が必要な国もあり、外国貿易局は新しいATIGAフォームDの発行開始日を2010年7月1日としました。新しいATIGAフォームDはCEPTのフォームDと僅かに異なる部分もあります。例えば、外国貿易局は偽造防止のためATIGAフォームDでの「すかし模様」を変更しました。しかし両方のフォームを記入する際に必要とされる情報は全く同じです。さらに、輸入者はアセアン産業協力スキーム (AICO: ASEAN Industrial Cooperation Scheme) での特恵関税率を利用する際にはATIGAフォームDを使用することができません。これはAICOスキームは1996年にアセアン各国により署名されたAICOスキーム基本協定に基づいているためです。この協定ではAICOの特恵はCEPTの原産地証明書(フォームD)上にAICOの印がある場合にのみ適用されます。ということで、アセアン各国にとってはATIGAフォームD を利用する製品にAICO 特恵を適用する法的根拠が現在まだないことになります。ASEAN諸国は、この問題を修正するために、ATIGAフォームDによりAICO 特恵を利用できるよう、現在AICO基本協定第2次プロトコルを草案中です。

2010年7月1日から輸出企業は外国貿易局にATIGAフォームDをリクエストすることができますが、一方、実際には輸入者側では、その日よりATIGA特恵を利用することはまだできません。税関機関がATIGA下での関税免除・削減に関する通達をまだ発行していないからであり、これはこの通達の根本部分を成す2009年品目別規則(PSR)が未だにタイ憲法2007の第190条により議会で承認されていないからです。したがって、この税関通達が発行されるまでは新しいATIGAフォームDによりATIGA特恵税率の適用はできないことになっています。

この件について税関機関は2010年4月30日にお知らせを出し、当面この間ATIGAフォームDを利用してATIGA特恵適用を希望する輸入者は、通常の税率でまずは関税を支払い、輸入申告の”Remark”欄に“ATIGAの特恵利用権利を保有する”旨を記入し、関連通達が発行された後に支払った関税分を返金リクエストするように案内をしています。また、税関機関はこの通達は2010年7月か8月には発行することができると表明しています。それまでは輸入者は関税減免の特恵を利用する際は、CEPTフォームDを使用するか、又はATIGAフォームDを使用して後日に関税返還権を行使するかのどちらかを選ぶこととなります。

(Source: http://www.bryancavetrade.com/  Asia Trade Alert as of June 28, 2010)

2010/07/07

AEOの相互承認

財務省関税局は先月24日、25日に相次いでAEOのEU とカナダとの相互承認を発表しました。
概要は財務省のホームページに載っています。

今日、カナダ側の日本とのAEO相互承認の発表プレスリリースを見ました。
実はカナダは同時に、日本だけでなく、シンガポールと韓国ともAEO相互承認を発表しています。

http://www.cbsa-asfc.gc.ca/media/release-communique/2010/2010-06-25-eng.html

日本側の日本語の発表だけではこれはわかりません。
AEO相互承認も将来はFTAのように網の目のように入り組んでくるかもしれません。

2010/06/30

ATAカルネの運用変更

商品見本や展示会用の物品を海外に持ち出して、日本へ持ち帰る際にはATAカルネを利用されていらっしゃる方は多いかと思います。
筆者も昔はよく利用する機会ありましたし、日本商事仲裁協会への申請業務も行っていました。

このカルネは一言で言えば、「一時輸入用インボイスの回数券」です。
外国で一時輸入の際にかかる関税などの税金を払わずに、持ち帰りを前提にしたものです。

これが今後は外国での販売、つまり外国で消費する、ことが可能となりました。
もちろんその分の現地でかかる税金は支払う必要がありますが、その納税証明書を後でカルネと共に日本商事仲裁協会に返還すればOKとのこと。
やはり、現地で実際に商談した際に、その場で買いたい、売ってくれという話になることは多いです。
弾力的な運用になったということですね。

参照: http://www.jcaa.or.jp/carnet-j/about.html

2010/06/28

世界のAEOの比較情報

6月24日と25日付けで立て続けにEUとカナダとのAEO相互承認がそれぞれ発表されました。
このニュース自体は財務省や税関のホームページを見ると載っているので、多くの方がすでにご存知だと思います。

海外の友人とこの件について情報交換をしていたら、とても良いweb siteを教えてくれました。
世界のAEO情報が比較チャート形式で載っている約40ページのpdf です。 内容はWCOによって書かれたもので、web site はフィンランドの税関になります。
http://www.tulli.fi/fi/yrityksille/asiakkaana_tullissa/AEO/kiinnostuitko/WCO_kooste.pdf

日本のAEO情報は税関が積極的に発信しているので簡単に情報収集できますが、世界各国のAEO情報が比較一覧形式になっているこの資料はなかなか貴重です。

2010/06/25

米国EAR 暗号規制の変更

米国EARの暗号規制が緩和され変更が予定されています。
http://www.federalregister.gov/OFRUpload/OFRData/2010-15072_PI.pdf

おそらく、まもなく発行されるFederal Registerに載ると思われます。
まだよく読んでいないのですが、主な変更内容は以下のようです。
  • ENCの運用の変更(緩和ですね)、例: 30 days rule の変更
  • Category 5 part 2 (5A002 や 5D002 など)に“ancillary cryptography”の除外規定の導入

“ancillary cryptography”は大きな影響があるでしょう。Wassenaar dual-use list の2009年12月の合意内容ですが、米国はまだEARに反映していませんでした。(日本は2010年4月に反映スミ)

(追記)

6月25日付けでBISよりプレスリリースで本件発表がありました。また、EARのCategory 5 - part 2も 6/25付けで中身がすでに変更になっています。

Summary: http://www.bis.doc.gov/news/2010/encryption_rule_summary.pdf

2010/06/21

FCPAの執行増加に注意

FCPA (The Foreign Corrupt Practices Act - 連邦海外腐敗行為防止法) の執行が近年目に見えて増加しています。

2004年からの統計によれば、法務省のFraud Section は37件の違反執行により、合計で15億ドル以上の罰金を科しています。
さらに注目すべきは2004年からの個人の違反執行件数は81人ですが、そのうちの46人は2009年と2010年前半のみで挙げられています。この期間の違反執行の半分以上がここ1-2年ということです。

FCPAが適用される範囲は極めて広く、米国系外資系企業で働く日本人はもちろん、日本企業でも米国でADR(米国預託証券)を発行していれば、例えば米国外のオペレーションでの不正でもFCPAの対象になります。また、海外企業が送金や支払いに米国系金融機関を使用した場合でも適用されます。

法務省では、社内でのコンプライアンスプログラムの実質的な運用と、違反を社内で発見した場合は速やかにVoluntary Disclosure をすることを指導しています。

おそらく米国系外資系企業で働く人間は、入社時の誓約書でもあれば、そこにFCPAを遵守することに同意する、といった文言があると思います。あらためて見直してみて認識を新たにするのも良いでしょう。

エリトリアを通常兵器CA国連武器禁輸国に追加(確定)

以前に当ブログで取り上げた、4/29付けのパブリックコメントで出されていた本件が確定して発表されました。
http://tradecomplianceoffice.blogspot.com/2010/05/ca.html

公布は2010年6月23日、施行は2010年9月1日です。

http://www.meti.go.jp/press/20100618001/20100618001.html

エリトリアを輸出令別表第3の2(国連武器禁輸国)に追加することにより、通常兵器キャッチオールで用途案件に該当する場合には、輸出許可申請が必要になります。

2010/06/17

AJCEP フィリピンもいよいよ発効

6月16日付けで外務省と経済産業省から、AJCEP (日アセアン包括的経済連携協定)がフィリピンとの間でいよいよ発効する旨の発表がありました。

効力発効は2010年7月1日からです。

これでAJCEPでまだ発効していない国は残りインドネシアだけとなりました。
他のアセアン諸国は、シンガポール、ラオス、ベトナム、ミュンマー、ブルネイ、マレーシア、タイ、及びカンボジアですが、すでに効力が発生しています。

2010/06/16

GEICOのペナルティから学ぶ

GEICO (GEICO General Insurance Company)という米国の保険会社は、日本ではあまり知名度はないかもしれません。ただ、株式投資が趣味の人にはウオーレン・バフェットが投資した会社ということでご存知の方もいらっしゃるでしょう。このGEICOがOFACから違反のペナルティを受けています。
オマハの賢人といわれるバフェットが投資した会社だからといって、優れたコンプライアンスを有しているとは限りません。また保険会社ですので、もちろん物の輸出で違反をしたわけではないのですが、このケースがおもしろいので取り上げます。
http://www.treas.gov/offices/enforcement/ofac/civpen/penalties/06032010.pdf

違反の内容は、SDN List に載っているSpecially Designated Narcotics Trafficker (“SDNTK”)の個人に車の保険証券をOFACのライセンスなしに販売したということです。民事の違反罰金はUS$11,000 です。

教訓となるのは以下の文面です。
GEICO does not screen its existing policyholders database for SDNs as the SDN list is updated but only on an annual basis. GEICO has committed to making improvements to remedy this gap in its OFAC compliance program.

顧客データーベースのスクリーニングの頻度が1年に1回以上はしなかったということでしょうか。
通常、米国のこの種のリストは頻繁に追加・変更などありますので、既存顧客のデーターベースもそれに合わせてチェックするべきでしょう。あまり頻繁な見直しも業務の負担となりますので、バランス感覚が必要でしょうが、私の以前いた会社では半月に1回のスクリーニングとしていました。

ところで、このOFACのSDL Listですが、この中に日本に居住する対象者も多いことをご存知でしょうか?
http://www.treas.gov/offices/enforcement/ofac/sdn/

ダウンロードするとpdfで455ページになりますが、pdf の検索機能で "Japan" で検索すると日本にある会社もたくさん出てきますのでお試し下さい。
キューバ関連の制裁でリストに載ったことろが多いようです。
米国系外資企業の方は国内販売でもご注意あれ。

2010/06/15

香港、今年二度目の輸出管理リスト改正(続編)

4月30日に、香港で輸出入管理コントロールリストの改訂が発表されました。
http://tradecomplianceoffice.blogspot.com/2010/04/blog-post_30.html

その時点では、いつから施行されるのか不明でしたが、香港のTID 当局 (Trade and Industry Department) から6月14日より施行との発表がありました。もう新リストで施行なのですね。
http://www.stc.tid.gov.hk/english/circular_pub/2010_stc04.html

2010/06/10

米国輸出管理改革案Update

業界紙 Inside U.S. Trade の記事によると、米国輸出管理の改革案のUpdate として、ホワイトハウス高官とのインタビューで、省庁間の改革Updateが近いうちに発表される模様。主なものは:

  • BIS, OFAC, と DDTCの様々なリストを一つにする件の詳細
  • シングルITシステムはDDTCのシステムになる模様
  • The Nuclear Regulatory Commission はsingle export agency からは外れるそう
  • 「米国人」や「輸出」の定義が (EARとITAR)で共通の定義となる
  • シングルリストはUnited States Munitions Listとなり、Dual-Use listはそこの追加され、商務省のCCLは消える模様

2010/06/05

マレーシア、トルコとFTA交渉を開始

ニュース報道によれば、マレーシアとトルコが二国間のFTA交渉を正式に開始したそうです。
5月31日と6月1日に最初の交渉がトルコのアンカラで行われたとのこと。

両国はこの交渉を2011年の前半にも終了させる意向で、3か月ごとに交渉を行う。
次回の交渉は8月の23日 - 25日の予定。

2010/06/04

De Minimis計算をしてみよう!(初級編)

米国の再輸出規制でやっかいで複雑なのはDe Minimisルールです。今回はこれを易しく理解できるようケーススタディを通じて解説してみます。

(状況)
あなたはグローバル企業のアジアパシフィックのトレードコンプライアンスマネージャーです。会社は中国に工場を持っていて、部品を世界各地から調達、最終製品を世界各地に出荷しています。
さて今回、中国の工場でハイパワーレーザーポインターを作ります。この製品は米国原産の6A005の部品を使用します。ただしこの6A005の部品は米国からは許可例外のCIVで輸出されています。
また、この製品は中国の工場で米国原産の技術で作られた4A994のコンピューターチップを含んでいます。また中国原産のEAR99のプラスチックケース、中国原産のEAR99のガラスレンズ、中国原産のEAR99のスイッチ、シンガポール原産のEAR99のロングライフバッテリー、ベトナム原産のEAR99のスクリューが使用されます。

(前提条件: 価格)
- 米国からのレーザー (6A005) は1,000個当たり$8,800で、輸送・保険料はそれに追加で$200
- シンガポールからのバッテリーは中国へのLanded cost で100個当たり$3,900
- 4A994のコンピューターチップは1個当たり$8
- プラスチックケースは1個当たり$0.5
- ガラスレンズは1個当たり$0.5
- スイッチは1個当たり$1.80
- スクリューは1製品に2個必要で2個で$0.20
- プロフィットマージンは1製品に$22、でポインター製品の販売価格は$81

(状況と質問)
- 米国原産比率 (6A005)は $9/$81で、11.1%となる。
- 営業のマネージャーからあなたへの質問です。この製品は輸出ライセンスなしにインドへ輸出できるか? また、もし比率が25%を超えていればどうか?
- 引き続き質問、この製品をイランで売りたいんだけど可能か? もし販売価格を$91にすればどうか?
- この製品をキューバ、北朝鮮、スーダン、シリアへの輸出はどう?

(答え)
- はい、インドへは輸出可能。6A005はCIVも適用できるし、GBSも適用可能。(インドはカントリーグループB) また、インドへは米国の原産比率が25%を超えても可能。
- イランへはDe Minimis は10%が境界線。この製品は11.1%ということで、イランへの輸出は不可。しかし、販売価格を$91にすれば10%を切るので De Minimis基準はクリア。ただし以下を注意。
- その他のATの国もDe Minimisは10%がライン。なので販売価格$81では輸出不可。また、販売価格$91なら、中国の企業が行うのであれば可能。ただしイランやスーダンへは米国人が、その中国企業の行為を手助けするということであればOFACの禁止事項に抵触するので不可。
(Note: General Prohibition in OFAC 560.420 note 1) 


De Minimis のケーススタディとしては内容は単純で初級編なのですが、前提条件だけ実際ありがちな状況にするために少し複雑にしてみました。書いてて少し疲れました。。。
まあこのようなスタディは自宅で酒を飲みながらすることはお勧めしません。
また、このケーススタディはDe Minimis の計算にフォーカスした空想問題で、実際の輸出ではエンドユーザースクリーニングなどその他の条件もありますので、ここから推論して実際のケースに適用するのは止めてください。あくまで理解を助けるトレーニング目的のためのものです。ついでにルールは時を追って変わりますので必ず最新のルールを参照を。

2010/05/28

タイ税関、違反自主申告の期間限定キャンペーンを始める

Customs compliance の仕事をしていると、故意でない関税法違反を見つけることがあると思います。
(例: 関税税番の誤り、関税評価の間違い、特恵措置の誤った適用などなど)
そういった場合は自主開示して申告 (Voluntary Self-Disclosure - "VSD") をすれば、後で税関に事後調査で発見されてペナルティを課されるより軽い罰金ですむことがあります。

タイもそうなのですが、今回、タイ税関では「通常の自主開示よりもさらにペナルティが軽くなる」自主開示キャンペーンを2010年9月15日まで行うそうです。これは実は以前にもおこなったことがあるそうで、再実施となります。以下がその話の概要になります。 ただしこのキャンペーンプログラムは全ての輸入者に適用されるわけではなく、税関からのinvitation が必要とのこと。まさに「限られたお客様のあなただけに贈る期間限定ボーナスキャンペーン」です。


"タイ関税局は、事後調査局が2010年5月15日から2010年9月30日までの間、自主開示プログラムを再実施することを許可した。これにより輸入者・輸出者およびその関連企業は、自身を監査し、その自主監査結果から発見された違反の可能性のある事案や関税法違反を自主開示することが可能となる。

輸入関税や税金が不足(例:関税税番の誤り、アンダーバリューでの申告、特恵措置やBOI 特権の使用ミスなど)であると関税局へ違反の可能性のある事案や関税法違反を自己申告した者は、輸入関税とVATのペナルティーを免除される資格が得ることができ、輸入関税とVATの不足分及び1ヶ月につきVATの1.5%の延滞税のみが課せられる。この免除措置は下記の条件が附される。

1) 違反の可能性のある事案や関税法違反は故意に行われたものではない、及び
2) この自主開示プログラムへの参加権利は、一つの会社に一回のみに限られている。(以前にこの権利を利用した企業は、今回のプログラムへの参加は不可。)

規制品目の輸入許可なしでの輸入や、税関への正規の輸入申告なしにハンドキャリー又は密輸によりタイ国内に輸入した者は、故意の関税法違反として見なされ、その場合は税関の自主開示の規定によりペナルティーを取消す資格の取得はできない。
よって関連する企業は、関税法規を遵守し違反リスクを低減する為に、この自主開示による貴重な機会をぜひ利用し、違反の可能性のある事案があれば関税局に2010年5月15日から2010年9月30日までの間に申告をすることをお奨めする。"

2010/05/27

中国の暗号規制をひもとく

先月の北京で行われた輸出管理サミットでは興味深いプレゼンテーションが多く聞けました。
その一つで、ある大手法律事務所のプレゼンで中国の暗号規制についてすごくわかりやすく解説されておられました。その内容サマリーをご紹介します。

1) 中国の暗号規制のいきさつと成り行き
  • 1999年に導入され、輸入、販売、使用、研究開発及び中国国内での商業用暗号製品の製造に関して規制をかける
  • 管轄は SEMB (State Encryption Management Commission - 国家暗号管理局)

2) 1999年の導入時の特徴

  • 商業暗号製品の研究開発、生産、販売、輸入及び使用にはSEMBの事前の認可が必要
  • 外資系企業はSEMBの認可なしに、中国で開発された暗号技術を使用した商業暗号製品の製造や販売はできない。
  • 特に暗号の研究開発には強い制限がかかる。
  • 外国で開発された暗号製品は、中国輸入に際しては、外資系企業の内部使用であれば可能。

3) Core / Non-Core の区別

  • 2000年に出された通達では、暗号規制は、暗号の使用が"Core"機能となる製品にのみ課される。
  • 例としては、PCのオペレーティングシステム、テレビゲーム、携帯電話など
  • SEMBは Core / Non-Core の解釈についてのガイダンスはそれ以降出していない。
  • SEMBには違反摘発のリソースはないし、Core / Non-Coreの判定は自主判断にまかされている。

4) 2007 年から 最近の動向

  • ライセンスの運用について: 外資系企業は外国で開発された商業暗号製品の使用について中国国外との接続については許可され、使用のライセンス・輸入のライセンスの手続き方法が紹介された。
  • しかし、Core \ Non-Coreの区別解釈については依然として不透明なまま。
  • SEMBと中国税関との合同メッセージで輸入許可運用が出された。
  • 2010年の中国関税分類番号で9つの新しい暗号製品を指定(10桁レベル)、例としては8517.62.2910 - Optical Communication encrypted routers など
  • キャッチオール条項もあり、それ以外の関税分類番号でも、輸入者が暗号技術があると「知っている」あるいは「知るに足る」場合もカバー。
  • 例外: 暗号製品が請負製造業者にて輸入されて輸出される場合、暗号製品が一時的に輸入され中国税関の監督下にあり輸出される場合、あるいは保税域内・輸出加工区にある場合など

5) グローバルの暗号規制と中国の比較

  • レジーム: グローバルではワッセナーの規制だが、中国はワッセナーメンバーではなく独自の暗号規制
  • 規制タイプ: グローバルではキー長やアルゴリズムでの規制だが、中国は"Core / Non-Core"が規制の基準
  • 規制のスコープ: グローバルでは通常、輸出規制のみ。しかし香港など一部のアジアの国では輸入も規制。エンドユース・エンドユーザー規制や米国では「見なし輸出」や「再輸出」も規制。中国では輸入、販売、使用、製造、研究開発への規制。
  • 暗号を海外製と自国製で区別: グローバルでは区別なし、中国では区別する。

6) 企業への実際的なアドバイス

  • 製品の分類
  • 税関とSEMBへの対応
  • 規制実施状況のモニター
  • 貿易団体との密な連絡

最後の「実際的な」アドバイスは対して役に立つようなものはありませんし、ブログ内で文字だけにしてしまうといまひとつです。しかし、実際のプレゼン説明はわかりやすく簡潔にまとめてあったので、非常に優れた内容でした。

2010/05/25

Unverified Listに載るには?

先月の北京で行われた輸出管理サミットでは興味深いプレゼンテーションが多く聞けました。
その一つをご紹介します。

ある米国大手機械メーカーのトレードコンプライアンスマネージャーのプレゼンで、"U.S. Export License Conditions and Scope Limitations" というのがありました。
ライセンスの許可条件や、そのカバーする範囲など、つまりはライセンスの附帯条件に関して詳細な講義をたっぷりうけました。全ては書ききれませんが、おもしろいと思ったのは、Unverified List についての説明でした。

米国の輸出ライセンス申請に際しては、(これは日本も同様ですが)、附帯条件が付されることがありますし、申請の前で調査しなければならないこと、輸出後の30日以内の報告義務などもあります。
米国大使館にはSpecial Agents overseas - Export control Officers (ECOs)が駐在している都市もあります。北京、香港、アブダビ、ニューデリー、モスクワなどの都市がそうで、ECOは米国の輸出管理のPre-License Check や Post Shipment Verifications なども行います。

具体的には、輸出ライセンスの申請でconsignee として名前があるこの会社は本当に実在する会社なのだろうか、許可に基づいて輸出された特定の製品は申請通りのエンドユーザーの元にちゃんと設置されているのだろうか(移転されていないだろうか)、などを確認調査したりします。

このような確認調査で、事実と異なる様子が発見された場合は、許可条件違反となりますし、ペナルティも1件につき$25万ドルあるいは価額の2倍がしっかりと課されます。

Unverified List はこのような違反で、存在が確認 (Verify) できなかった米国外のentity をリストして、Red Flag つまり「怪しい」出荷先だと、警告を発しているわけです。
http://www.bis.doc.gov/enforcement/unverifiedlist/unverified_parties.html

Unverified List はDenied Persons List やEntity List に比べていまひとつマイナーな(?)存在のリストですが、過去に怪しい前歴があった事実があるentityです。BISのウエッブサイトを読むだけでなく、このように詳しい方からじっくりと説明を聞くとよく理解できますし、やはり要注意リストですね。

しかしライセンスの附帯条件だけの講義で40枚のスライドを準備され、1時間近くお話されました。
全部の内容はブログに書ききれませんが、このプレゼンターの方の知識と経験の豊富さには脱帽でした。

2010/05/24

NORINCOの優れたコンプライアンス

NORINCOとはCHINA NORTH INDUSTRIES CORPORATIONの略で、実は経済産業省がキャッチオールコントロール規制の中で外国ユーザーリストに掲載している、要は大量兵器拡散の要注意企業ということになります。

実は、このNORINCOですが、自社内ではInternal Compliance Program ("ICP")を保持し、しっかり社内で輸出管理をしていることをアピールしています。

先月に北京にて開催されたExport Control Sumit (*)にてNORINCOがプレゼンを行い、いかに彼らが優れたICPを保持・実施しているかを力説しておりました。

(*) 筆者はこの会議に参加し、発表を聞いてきました。参加企業は主に米国系大企業とその中国法人。ですので米国人のリーガルカウンセル、シニアーマネージメント、トレードコンプライアンスマネージャー、米国BISや米国大使館から、米国人および中国人が大半でした。
日本企業は参加しておらず、日本人も(私を除いて)参加された方はいらっしゃらなかったようです。

その中でNORINCOICP Implementation について素晴らしいプレゼンを行いました。
その要旨は:

  • 確かに軍需産業品目も扱っているが、機械・鉱工業・輸送・インフラ関連の民生品ビジネスが今や売上の85%を占める
  • Weaspon of Massive Destruction ("WMD")の拡散ビジネスには全く関与せず、企業ポリシーとして明確に否定し、ICPでもBasic Value としてWMDには一切関わらないことを宣言
  • ICPでは企業コミットメント、組織としての責任の明確化、コンプライアンスプロセス、教育・トレーニング、記録保持、監査の手続きを明確に定めている
  • 中国国内の法令順守、国連安保理の決議への賛同、国際平和への協力・サポート
  • 社長直轄のICP Council を設置し、コンプライアンスの責任機関とする。またICP Office を日常業務やICP Councilの事務局として設置。
  • Automating Compliance ProcessをITシステムとして導入、自動でトランザクションのコンプライアンスチェックを実施
  • 社外監査として、米国のUniversity of Georgia Center for International Trade & Security からレビューを受ける

このような内容で、ICP implementation の事例としては文句の付けようがなく、ベストプラクティスとして紹介できる内容でしょう。まさに「優れた輸出管理を行っている企業」であり、日本国内ではこのレベルまでには到達していない企業はたくさんあります。

しかし、NORINCOをグーグルでサーチすると、武器取引での後ろ暗い過去や、米国政府からも制裁リストに載ったなど、「要注意取引先」を示唆する過去は簡単に見つかりますし。今現在も外国ユーザーリスト掲載企業ですので、いくら優れたICPを持っていても、輸出に際してはキャッチオールの需要者案件に該当することには変わりありません。

NORINCOに関するこの2つの対照的な事実は、どう解釈すれば良いのでしょうか? いつか外国ユーザーリストからはずされる日が来るのでしょうか? 外国ユーザーリストは毎年のように改正されますので次回の改正、おそらくもうすぐでしょうが、少し注意してみてみたいですね。

2010/05/18

First Sale ルールは日本にもあるのか?

米国でFirst Sale ルールが改正されそうだという話を以前にこのブログで取り上げました。
(2010/01/18 米国のFirst Sale ルール

ところで最近、海外のSNS である Linked Inの中のtrade community で、First Sale ルールは日本にも適用されるとする記事を見つけました。 私自身はこの意見には懐疑的なのですが、根拠とする法令と、そのスキームは以下のように紹介されています。

根拠法令: 商法551条 - 558条(問屋営業: 要はbroker業務)と、関税法第95条(税関事務管理人)

ざっくり乱暴に言ってしまうと、
日本に居住しないものが日本で税関手続きを行う場合には、自らの代わりに税関手続を行う税関事務管理人を定めて、代理として税関への輸出入申告手続きを行うことができます。(その際に、税関事務管理人が通関業務を行う場合は通関業の免許が必要です。) この場合、税関事務管理人を指名した非居住者は、海外の製造業者と取引をして、製品を直接に製造業者から日本へ輸出するとします。この場合の取引は、海外での非居住者と製造業者との取引が輸入取引に該当することになるので、First Saleと同様の関税削減効果が見込める、という理屈です。

確かに言われればそうですが、この場合は日本に支店や法人がないことが前提ですので、使えるケースも限られてきそうです。

それ以上に、心配なことがあります。2007年6月に改正された関税定率法基本通達の4-1 (2)、 イ、 (ロ)では以下のように、First Sale のようなトランザクションタイプを明確に否定しています。

4―1 法第4 条((課税価格の決定の原則))に規定する「輸入取引」の意義及び取扱いについては、次による。

(2) 輸入貨物について複数の売買が行われている次のような場合は、それぞれ以下のとおり取り扱うものとする。

イ.  貨物が外国から本邦へ輸出される前に当該貨物を本邦へ向けて輸出する目的で複数の売買が行われた場合には、当該貨物の本邦への輸出を現実にもたらすこととなった売買を輸入取引とする。例えば、次のような場合には、それぞれに定めるところによる。

(ロ) 外国の卸売業者と本邦の居住者との間で貨物を当該外国から本邦に向けて輸出することを目的とした売買契約が締結された後、当該契約を履行するために当該卸売業者と当該外国又は第三国の生産者との間で当該貨物の売買契約が締結され、当該貨物が当該生産者から本邦に向けて輸出された場合は、当該卸売業者と当該生産者との間の売買は当該卸売業者と本邦の居住者との間の売買から派生したものに過ぎず、当該貨物の本邦への輸出は当該卸売業者と本邦の居住者との間の売買により現実にもたらされたものであることから、当該卸売業者と本邦の居住者との間の売買が輸入取引となる。


この基本通達がありますのでFirst Sale の関税評価方式は、日本では認められないと思っていました。
ただし、法の方が通達より優先され上位にありますし、通達はあくまで行政機関内部における統一的な指針であり、法により保障された国民の権利・義務を直接に制限するものではない、とする意見もあるようです。(個人的にはおっかないなあと思いますが。。。)

この関税法第95条を盾にFirst Saleと同様な効果を日本で実現しようとするには、相当のリスクを覚悟せねばならないでしょうね。

2010/05/13

コピー機内に輸出管理該当情報はないか?

筆者の米国の同僚のブログに興味深い記事がありましたので紹介します。

どこのオフィスでもコピー機は置いてあるでしょうが、そのコピー機で2002年以降に製造されたモデルの大部分は内部にハードディスクドライブを備えていることは意外と知られていないようです。
そのハードディスクドライブには、コピー機にかけた情報が満載です。

通常、オフィスコピー機はリース契約で古くなると、業者さんが引き取りに来て新しい機種に置き換えたりします。古いコピー機のハードディスクはどこにいくのでしょうか?

CBSイブニングニュースの記事で、こういった古いコピー機から個人情報・機密情報が出るわ出るわという潜入体験レポートを読みました。こんな情報を含んだままのコピー機がジャンク品下取りということで売買され、海外にコンテナーに詰められて輸出されることも多いそうです。
http://www.cbsnews.com/stories/2010/04/19/eveningnews/main6412439.shtml


技術の進歩に伴い輸出管理の仕事でカバーすることも多くなります。最近ではクラウドコンピューティング、でもって今度はコピー機までも管理対象?? ため息が出そうです。。。

このコピー機のケースは、輸出管理だけでなく、企業としての秘密保持・個人情報保護の分野でもあります。コピー機のハードディスクは使用後、データー消去、あるいは粉砕するとか、機微な情報のコピーはセキュリティのかかったコピー機でのみ行うとか対策が必要でしょうね。

2010/05/04

エリトリアを通常兵器CA国連武器禁輸国に追加


4/29付けの経済産業省パブリックコメントで、輸出貿易管理令の一部改正政令案が出されました。

内容は、エリトリアを通常兵器キャッチオールの国連武器禁輸国(別表第3の2)に追加するという簡単な内容です。これに追加されると、エリトリア向けの輸出の場合は、通常兵器キャッチオールの客観要件(用途要件のみ、WMDキャッチオールの需要者要件は必要なし)の審査が輸出者自身の判断で必要になります。

これは昨年12月にた国連安全保障理事会において、エリトリアに対する武器禁輸等を内容とする安保理決議第1907号が採択されたことを踏まえたものだそうです。

エリトリアは、エチオピアとスーダンに国境を接する人口470万人の小国。日本からの輸出は2007年のデーターで、年間で約4億円と小規模で、輸出主要品目は乗用車、トラック、バスなど、です。


パブコメの期限は5月28日です。

2010/04/30

香港、今年二度目の輸出管理リスト改正

香港の輸出管理リストが改正されることが本日発表になりました。
今年の2月に一度リストを改正していますので、今年二度目の改正になります。
要点は:

  • ワッセナーの2009年リストを反映する。日本のリストは今年4月から反映してますので、香港も日本に追いつく形になります。
  • 品目として大きな影響がありそうなのは、Schedule 1に、Category 5 part 2 のAncillary encryption (Note 4) の除外規定が入るので、副次的暗号製品が除外品目になること。
  • Schedule 2 から暗号製品を除外するそうです。今までは機微な品目としてトランジットでも輸出入ライセンスを必要とするSchedule 2品目に(武器や原子力と並んで!)暗号製品も入ってました。これは緩和措置でしょう。

いつから施行されるかはまだ明記されておらず、必要な法的手続きが済み次第ですが、前回のペース(12月発表で2月施行)を考えると7月頃でしょうか。

2010/04/28

米国輸出管理の「一つの」改革案

すでにご存知の方が多いと思います、が2010年4月20日にロバート・ゲーツ米国防長官が、輸出管理改革案を発表しました。 改革案要旨は以下の通りで、キーワードは「ひとつにする」です。
  • 一つの管理品目リストと規制ユーザーリスト: EARとITARでバラバラな品目リストや規制ユーザーリストをひとつにまとめる
  • 一つのライセンス発給省庁: これも商務省管轄と国務省管轄の別々のライセンスのことを言っています。
  • 一つの違反執行機関: 商務省内の執行機関、税関やFBIなど複数の執行機関
  • 一つのITシステム: これも商務省のSNAP-Rと、国務省のDTradeに分かれています。


実現にはフェーズを3つに分けて順次取り掛かるようです。ただし最終的には連邦議会の承認と法改正が必要なので、そこには時間がかかるでしょう。

でもこの「一つの」管轄省庁、簡潔にして改革する、と大げさにいってますが、これって日本を含めた多くの他国の輸出管理システムはすでにそうだと思いますので、米国のシステムは今までがダメだったわけで、ようやく他国に追いつく試みをスタートさせたと思うのは私だけでしょうか?


2010/04/27

マレーシア Strategic Trade Bill 2010について

先週一杯まで、北京での輸出管理セミナーに参加しておりました。なぜか北京のホテルからはこのブログサイトにアクセスできませんでした。他のサイトはほぼ問題なくアクセスできたことを考えると、Googleのブログサイトなので、おそらく中国国内からは検閲でアクセス不可だったのでしょう。


マレーシアは従来、4大レジームに対応する有効な国内の輸出法規制が存在せず、イランやリビアへの横流れの「抜け穴」と見られていました。
しかし状況は変わりそうです。2010年4月上旬にマレーシア国会で Strategic Trade Bill 2010が可決され、マレーシアも先進国並みの輸出管理法制度を備えるべく、第1歩を踏み出しました。
この背景には米国政府からの強い圧力があったとも言われています。
この法案はすでに英語で公開されています。以下はその法案を読んでのポイント概略です。

  • 規制品目リストは未だ未発表:  一番気になるのは規制品目リストがワッセナーのデュアルユース品に対応していて番号がECCNタイプなのかどうかでしょう。これは実はまだわかりません。Strategic Trade Bill 2010には、後日 Gazette に大臣により発表されるとあるだけです。
  • 規制対象のトランザクションは、輸出だけでなく、transshipment, transit, brokering, intangible technology transfer と広範囲を網羅している。また、大臣は規制エンドユーザーを指定することができるとあります。国連安保理決議 1540号 (UNSCR1540) や、キャッチオール規制の考え方にに対応する法制と言えます。
  • 厳しいペナルティ:  違反への罰則は、最高で死刑・終身刑です。(これは故意の違反で武器にに関連し、そして違反の結果死者が出た場合に限定されます。) しかし故意でなく、違反品目が武器以外であったとしても、個人には5年を超えない懲役・500万リンギット(US$で約150万)、法人には1,000万リンギット(US$で約300万)が最高と厳しいものになっています。
  • 管轄省庁はおそらく Ministry of International Trade and Industry ("MITI") と言われている。(法令上は言及しておらず、後で大臣を指定する形。ニュース発表ではおそらくMITIであろうとのことです。)
  • 域外適用条項あり: 条文では米国の輸出管理の様に域外適用を言及しています。ただし実際の運用はどのようになるかは定かではありません。
    Extra-territorial application4. (1) This Act shall, in relation to any person, whatever his nationality or citizenship, have effect outside as well as within Malaysia, and where an offence under this Act is committed by any person in any place outside Malaysia, he may be dealt within respect of such offence as if the offence was committed at any place within Malaysia.
結論から言うと、まだ実際の輸出管理がどのようなものになるか、この法案からでは漠然とした姿しか見えてきません。しかし企業としては、輸出管理体制の構築は一夜ではできませんので、今後の動向をモニターしつつ、下準備を進めておきたいものです。


(Source: http://www.parlimen.gov.my/billindexbi/pdf/DR042010E.pdf )

2010/04/07

タイとマレーシア輸出管理法規制を導入予定

現在、出張でタイのバンコクに来ております。目的はバンコク在住の企業と、当地の米国商工会議所で米国輸出管理についてのセミナー講師を務めることです。
米国輸出管理は域外適用で、第3国からの米国製品の再輸出も規制対象ですので、タイで操業している企業でも知っておく必要があります。

タイの輸出管理の国内法ですが、日本や米国のような4大国際レジームに準拠した法制度はありません。もちろん武器や麻薬とか化学兵器に使える化学品とかは輸出規制はありますが、いわゆるワッセナーのDual-use item の規制は導入していません。
ただしここにきてタイ政府も先進国並みの輸出管理を導入する強い意欲を示しています。
それで筆者は、セミナー講師の傍ら、タイの商務省に呼ばれて先進国の輸出管理についてブリーフィングをすることになりました。今後タイの輸出法規制がどうなっていくかも、このブログでモニターしていきたいと思います。

また、マレーシアでも Strategic Trade Bill が今月に議会を通過し、国連決議UNSCR1540をフォローするためのWMD non-proliferation の国内法を整備します。マレーシアはイスラム国家なのでイランやリビアと結びつきが強く、また先進国並みの輸出管理法制度がないため、迂回輸出の注意国と言われてきました。
今後、新制度導入でこれが変わりそうですし、こっちもモニターしていかないといけません。

2010/03/27

フレイトフォワダーの輸出違反

BISから最近アナウンスされた輸出違反で、フレイトフォワダーの G&W International Forwarders が2万ドルの罰金と、社内監査によるコンプライアンスチェックの処分を受けています。

http://efoia.bis.doc.gov/exportcontrolviolations/e2158.PDF

違反内容は、EAR99品目である “Stack Sizer Screening Machine” をインドのEntity List 企業に無許可で輸出したということです。残念なのは、このインドのEntity List掲載企業のケースの場合は、輸出許可がおりないという厳しいものではなく、「ケースバイケースで審査され、EAR99 品目の場合は推定許可」という注釈が付いています。つまり輸出前にきちんとチェックがされ、BISに申請さえしていれば何の問題もなかったわけです。

EAR99品目のEntity List 掲載企業への輸出違反は、インド、中国、UAE、香港、パキスタン、マレーシアなどが多いせいか、違反事例では頻繁に目にします。注意したいものです。

また、最近、米国の輸出管理でフレイトフォワダーの違反摘発や罰金が多いように思われます。
BISもそのへんは認識していて、フレイトフォワダー向けのガイダンスを作ってWebに掲載したりしています。 「荷主に言われたから。。。」というマインドを持ち続けていては、今後自社の身に危機が降りかかるかもしれません。

2010/03/24

米国とアジアの輸出管理基礎セミナーのご案内

【ジェトロ・シンガポールからのお知らせ】

米国と日本、シンガポール等の輸出管理の基礎セミナーのご案内

2010年4月12日(月)10:00-12:00



この度、ジェトロのシンガポールオフィスの依頼を受けまして、筆者が米国とアジアの輸出管理についてセミナー講師をすることになりました。 場所はシンガポールになりますが、日系企業を対象にして、日本語で行います。

(以下はJETROシンガポールによるセミナー案内分になります)

新興市場への輸出が拡大する一方で、ハイテク製品の輸出管理の重要性は年々高まっています。

 日米欧のみならずシンガポール等先進各国は管理体制の整備を進めており、企業にとっては規制違反時の制裁等によるリスクを回避することが重要となっています。

 日本では09年11月から違反時の罰則が強化されており、また自国法の域外適用のある米国法違反の場合は一層ダメージが大きくなります。シンガポールは国際輸出管理レジームには加盟していませんが、08年1月にワッセナー協約対象品目をほぼ網羅し、戦略物資規制法の下、大量破壊兵器キャッチオール規制も導入し、日米欧並みの輸出管理体制を整備しています。

 最近の動向では、08年12月のワッセナー合意を反映した新輸出管理規制が、EUでは09年5月、米国では09年12月に施行され、日本およびシンガポールでは今年4月に施行されます。

 こうした国際的な輸出管理体制の整備を受け、ジェトロ・シンガポールでは、通商弁護士事務所のブライアンケイブ、シンガポール日本商工会議所との共催により、「米国と日本、シンガポール等の輸出管理の基礎」をテーマにセミナーを開催いたします。

 ブライアンケイブ・インターナショナルトレード(株)の兼光達也シニアマネージャーを講師に、(1) 輸出管理の意義、(2) 国際輸出管理レジームと米・日・シンガポールの法規制、(3) 米国の再輸出規制、(4) シンガポールの輸出管理、(5) 違反事例と自主開示制度、(6) 違反回避のためのコンプライアンス上の留意点、等についてわかりやすくご紹介いたします。

 シンガポールはハイテク貿易が盛んな物流拠点でもあります。輸出管理制度にご関心のある日系企業の皆様におかれましては奮って参加くださるようご案内申し上げます。

                 記

■日時: 4月12日(月)10:00~12:00(9:30受付開始)

■場所: Japanese Association(日本人会館)2F ボールルーム
     120 Adam Road  TEL: 6468-0066
     シンガポール

■定員: 80名(無料)

■主催: ジェトロ・シンガポール、ブライアンケイブ、
      シンガポール日本商工会議所(JCCI)

■次第:

 10:00-10:10 主催者挨拶

 10:10-11:40 「米国と日本、シンガポール等の輸出管理の基礎」
         ブライアンケイブ・インターナショナルトレード(株)
         シニアマネージャー 兼光達也

 11:40-12:00 Q&A

■お申し込みは下記URLからお願いいたします。
 https://www.jetro.go.jp/form/fm/spr/export100412

■照会先:[内容]  久富(6429-9502)、SPR@jetro.go.jp
     [登録方法]  キーワイ(6429-9515) 和田(6429-9504)

2010/03/17

中国での輸出管理コンプライアンスサミット

来月4月19日から21日まで北京で China Summit on Export Control Compliance が開催されます。
輸出管理コンプライアンスに関するセミナーで、トピックとしては米国輸出管理、日本を含むアジアの輸出管理、中国の暗号規制などかなり幅広いものです。
参加者はグローバル企業のトップマネージメントやリーガルカウンセルがメインです。
言語は英語で、場所は北京のマリオットホテル (Beijing Marriott Hotel Northeast) です。
http://www.americanconference.com/ChinaExport.htm

何でこんな宣伝をブログでするのかと申しますと、筆者自身がスピーカーとして Workshop Bの部で日本・香港・シンガポールの輸出管理についてお話をするからです。
参加企業を見ると米国のグローバル企業と中国の企業ばかりが目立ち、日本企業は参加していないようです。(参加企業例: AMD, Airbus, Boeing, Ericsson, GE, GM, Huawei, IBM, Intel, Sun Microsystems, Texas Instruments など)

サミット主催者としては日本企業からの参加もぜひ増やしたい意向のようで、スピーカーである私自身にも宣伝を御願いしてね、ということです。(弊社としては特に義理立てする筋あいはないのですが。。。まあ参加者が増えると嬉しいですし、日本人が私一人だとさびしいものもあります。)

参加料金がUS$2,000-3,000くらいとちょい高いのですが、私の紹介だとUS$200ほどディスカウントしてくれるそうです。あまり大したディスカウントではありませんが、ご興味の方があればコメント頂ければ会議主催者に紹介します。

2010/03/16

オバマ演説での輸出規制緩和

3月11日のオバマ大統領の演説の中で、輸出管理の緩和をして、米国の輸出を2倍にしよう!という話が出たのは日本の新聞紙上で報道されましたのでご存知の方も多いかと思います。

今日は通勤途上の電車の中でその演説の原稿を読んでいました。
http://www.whitehouse.gov/the-press-office/remarks-president-export-import-banks-annual-conference

実は輸出管理について触れたのはこの演説の中で最後の部分だけで非常に短いです。

Finally, we’re working to reform our Export Control System for our strategic, high-tech industries, which will strengthen our national security. What we want to do is concentrate our efforts on enforcing controls on the export of our most critical technologies, making America safer while enhancing the competitiveness of key American industries. We’ve conducted a broad review of the Export Control System, and Secretary Gates will outline our reform proposal within the next couple of weeks. But today, I’d like to announce two steps that we’re prepared to take.

First, we’re going to streamline the process certain companies need to go through to get their products to market -– products with encryption capabilities like cell phone and network storage devices. Right now, they endure a technical review that can take between 30 and 60 days, and that puts that company at a distinct disadvantage to foreign competitors who don’t face those same delays. So a new one-time online process will shorten that review time from 30 days to 30 minutes, and that makes it quicker and easier for our businesses to compete while meeting our national security requirements.

And second, we’re going to eliminate unnecessary obstacles for exporting products to companies with dual-national and third-country-national employees. Currently, our exporters and foreign consumers of these goods have to comply with two different, conflicting set of standards. They’re running on two tracks, when they could be running just on one. So we’re moving towards harmonizing those standards and making it easier for American and foreign companies to comply with our requirements without diminishing our security. And I look forward to consulting with Congress on these reforms, as well as broader export control reform efforts.

新聞紙上には具体的に書いてなかったのですが、英語で読むと内容が(多少は)具体的にわかります。ようは以下の2点だけです。

  1. 暗号製品のBISによるレビューで、暗号の規制の手続きがわずらわしく、企業の足を引っ張っている。手続きを簡素化をするが具体的にはワンタイムレビューを改善して、今まで30-60日かかっていた期間を何と30分に短縮する。
  2. 米国の技術の輸出は(日本の居住者 --> 非居住者とは違って)、国籍ベースで「みなし輸出」を判定します。それがEARとITARで、dual-national やThird-country-national で取扱いが違っててわずらわしい。これを"harmonize" する。

2.については多少説明が必要でしょう。商務省のEARでは、米国以外の国籍を2つ以上保持している人には、もっとも最近取得した国籍か永住権の国をみなします。しかし、国務省のITAR規定では、それぞれに国両方を見なして、規制が厳しい国向けの規定が適用されます。このように管轄によって二重国籍者への取扱いが違うので、これを何とかしようということです。

もっと具体的にどうするかは2-3週間うちにまたアナウンスがあるようですので期待しましょう。

2010/03/15

タイでのAANZFTAは3月12日より施行

アセアンとオーストラリア、ニュージーランドのFTAであるAANZFTAは今年の1月1日から発効になりましたが、タイではつい先週まで発効してませんでした。

タイの財務省(MOF)は、2010年3月12日に通達を発効し、ようやく3月12日にタイもAANZFTAの仲間入りをしました。

AANZFTAは、オーストラリア、ニュージーランドとASEAN国の10ヶ国(ブルネイ、ミャンマー、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、シンガポール、タイとベトナム)の12の構成国から成ります。
AANZFTAは2009年2月27日に署名され、2010年1月1日から各国の内部手続きを完了したメンバー国から有効になり、現在オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、ベトナムとシンガポールで実施となっていて、タイも3月12日によやく仲間入りしました。

カンボジア、インドネシアとラオスはまだです。批准の後、60日以内に発効となります。


タイは現在、オーストラリアとニュージーランドとは二国間のbilateral FTAもありますが、AANZFTAは特に物品の原産規定について、タイ-オーストラリア自由貿易協定(TAFTA)やタイ-ニュージーランド経済連携協定(TNZCEP)といった二国間FTAよりもより大きなメリットがあります。

AANZFTAの下では、(タイ以外の)ASEANメンバー国原産の原材料を、オーストラリアやニュージーランドに輸出される完成品の付加価値基準(RVC)の計算にも使用可能です。同様に、オーストラリアやニュージーランドの原産材料が、タイからASEANの他のメンバー国に輸出する製品の付加価値基準 (RVC)の計算に加算して使用できます。

このようにAANZFTAの下では、TAFTAやTNZCEPよりもより簡単に原産資格を得ることができ、特恵関税を享受しやすくなろうかと思います。ですので、商品をオーストラリア、ニュージーランドに輸出する企業、又は生産材料をオーストラリア、ニュージーランドから輸入しASEANの他国へ輸出する企業は、AANZFTAを利用することによって生産コスト削減も可能となります。ぜひAANZFTAをタイでもご利用下さい。

2010/03/11

北朝鮮からの輸入での行政処分


3月10日付けで経済産業省のWeb site に北朝鮮からの輸入禁止の行政処分の記事が出ていました。

輸出管理の世界では「行政制裁: 最大3年の輸出禁止」が有名ですが、輸入の違反の行政制裁はどうなっているのでしょう。この違反の行政処分をサンプルにして根拠法令を整理してみたいと思います。


まず大雑把な理解として、現在日本では北朝鮮からは全貨物が輸入禁止です。

処分対象者は、北朝鮮原産のサルトリイバラ (*) の葉を中国経由で輸入しました。(中国経由でも品目の原産地が北朝鮮なので違反の対象です。)


(*) サルトリイバラって何? (ウイキペディアより引用)

根茎は薬用に使われる。
四国地方などの関西圏以南では、葉が柏餅を包むのに用いられる。
園芸用では、庭園の添景木や、赤く熟す果実は生花にも用いられる。繁殖は 3月頃に播種する。


この輸入違反について、外為法第53条(制裁)の第2項に基づき全地域からの3ヶ月間の輸入禁止の行政処分となりました。輸入禁止は第3者を介しての輸入にも適用されます。

この外為法第53条2条では「貨物の輸出または輸入に関し、・・・ 1年以内の期間を限り・・・輸入を禁止することができる。」とあります。 安全保障の輸出違反(外為法48条の違反)の制裁は、53条の第1項で、これは最大3年ですので、これとは違って少し軽いです。
今回のケースは最大1年の輸入禁止のところを3ヶ月ですんだ、ということになります。


さて、この輸入禁止措置の根拠法令はどうなっているのでしょう? 

これは外為法第52条(輸入承認の義務)が根拠で、さらに輸入貿易管理令の第3条第1項に基づく輸入公表で、経済産業大臣の承認を要する貨物というのがリストされています。この輸入の承認を受けるべき貨物は公表で、輸入貿易管理令第4条第1項第2号による輸入承認を受ける、として品目によっては魚類やダイヤモンドなどHSコードにて指定がありますが、北朝鮮については「全貨物」としてリストされていますので容赦ないです。


あと、輸入禁止に関連する措置として仲介貿易取引も禁止ですし、輸入代金支払いの禁止も規定されています。とにかく「全面的に」貿易禁止措置が取られています。


善意の日本の貿易業者は北朝鮮との輸出入禁止は理解しておられますので今更こんな説明も必要ないでしょうが、外資系企業で働いていると、日本の事情を知らない海外の人に、日本ではどの法律を根拠にどういった措置が取られているかを客観的に(英語で)説明する必要がありますので、何でこんなペナルティが科されたのかを根拠法令まで遡ってチェックする癖をつけとくと、聞かれたときにすぐ応えられます。

2010/03/10

ベトナム、関税評価でロイヤルティを含めなくてよい?

あるニュースレターを読んでいて、おもしろい記事を見つけました。
Vietnam: Import duties no longer levied on royalties for the use of brands, patents or know-how?

内容は、ベトナムでは外資からの技術やノウハウの流入を阻害せず助長するために、輸入品の関税評価でロイヤルティや特許権・商標権などを関税の課税価格に含めなくてよい、とする通達を2010年1月に財務省から出されたそうです。

ベトナムは2007年にWTOに加盟してますし、日本と同様に、これらロイヤルティ関連費用は関税の課税価格に含めるべし、とされていました。(Circular 40 / TT-BTC issued on May 22, 2008)
しかしながらこれが通達により (Notice 22 / TB-BTC on Janunary 13, 2010)、例外を認める格好です。

具体的には課税価格に含めなくて良いものは、「海外の事業者に契約により継続的に支払われている商標料や特許料などのノウハウであり、輸入時にその価額を決定できないもの」だそうです。

当然、ベトナムの輸入者で、このようなロイヤルティを海外の事業者に支払ってきて、輸入品の課税価格に算入してきた企業にとっては節税によるコスト削減の機会となります。
ただし、すべての種類のロイヤルティが課税価格に不算入になるわけではないので、個別の適用にあたってはケースバイケースで難しい判断に迫られそうです。ガイドラインはおそらく今後、ベトナム税関から示されることになるはずです。また過去にこのようなロイヤルティを支払った企業への関税還付がなされるかどうかも不透明です。

いずれにしても関わりのある企業にとっては、本件の情報収集とベトナム税関とのコンタクトを密に取ることをお奨めします。

2010/03/05

タイのROH

ROHと書くと、貿易に通じている方にはRoHS(ローズ)指令(特定有害物質の使用制限)のことか?とすぐ思われますと思いますが、Regional Operating Headquarters、地域統括本社のことです。

タイや他のアセアン諸国では、ROHの機能を持つ法人に対して税制優遇を適用しています。
海外またはタイ国内の関連会社または支店への経営・技術・サポートサービスを提供する、タイの法律に基づいて設立された法人組織であればROHになります。

ROHには様々な税優遇措置があります。ROHの海外の関連会社や支店から提供された所定のサービスから発生する利益には法人税が30パーセントから10パーセントに軽減され、また外国人駐在員のROHから支払われた収入への個人所得税も軽減され、通常の累進税率ではなく4年間一律15パーセントのフラット税率になったりもします。

日本の法人税の実効税率は40%前後ですし、個人所得税も収入の高い人で税率の高い国の人ならば15%というのは魅力的でしょう。

ROHの根拠法は、7年前に施行され、タイを東南アジアでのROHの設立中心拠点とすべく振興してきましたが、現在タイではROHが数にして100以下しか設立されていません。Asia Pacific の地域本社をどこに置くかを考えたら、税制だけでなく、インフラや人材も大きなポイントですのでシンガポールや香港に比べるとタイは少し厳しいかもしれません。
ですのでタイでのROHの設立をより魅力的なものにするために、タイ政府も色々と次の施策を考えているそうです。

貿易のFTAやEPAに目を移すと、アセアンというくくりでは、日本・中国・韓国とFTAを締結してますし、今年の1月からはインドと豪州・ニュージーランドとも一部発行しました。EUとも交渉中です。
シンガポールとベトナムは個別にEUとFTA交渉を始めました。
いわゆる大手のマーケット地域とFTAを締結し、外国からの投資を呼びかける姿勢も評価できますし、今後ますますタイやアセアンの貿易や投資での重要性は増しそうです。目が離せませんので今後ともウオッチを続けていきます。

2010/03/02

CJのRWAが3年で3倍に増える

タイトルだけでは何のことやらわかりませんね。
CJとはCommodity Jurisdiction で、RWAはReturned Without Action です。
製品がEARのCCLに分類されるか、ITARのUSML になるかの判定がCommodity Jurisdiction です。 ITARはEARに勝るので、ITARのUSMLに分類されるとEARの対象外になり、ITAR規制製品となります。このお伺いをDDTC (Directorate of Defense Trade Controls) に出すわけです。

発表された数字では、CJでRWAとして突き返された申請が3年で3倍になったということになります。
2007年は6%だったのが、2009年には18%になったとのこと。
CJの申請自体も数が増えて、3年で2倍になり、2009年は817件の申請でした。

RWAが増えたのには複数の理由があるそうで、申請フォームが新しくなったとか、運用の厳格化とか、60日デッドラインルールのせいだとか、いろいろです。申請自体の数が増えたのも理由のひとつでしょう。

また、CJによりCCLに分類された割合も低下しているとのこと。2009年の817件の申請のうち、55%がCCLのEAR管轄になり、21%がUSMLのITAR管轄になり、5%が両方の管轄に分解されたそうです。
これは2008年の70%がCCL、20%がUSML 、7%が両方分割に比べて、EAR側の比重が減っています。

この数字は母数が少ないですし、3年という短い期間から傾向を云々するのも差し控えますが、RWAの差し戻しになると企業にとっては時間・コスト・機会の損失になりますので、信頼できるLaw firm のプロフェッショナルに相談することがお勧めです。

(Source: Washington Tariff & Trade Letter - 03/01/2010)

2010/03/01

AEOの世界各国での名称

貿易に携わる人にとって最近の関心事項のひとつにAEOが挙げられると思います。
AEO = Authorized Economic Operator

このAEOステータスの良い点は、もちろん自国での輸出入でのスムーズで迅速な通関がありますが、長期的には他国との相互認証による利点もあげられるでしょう。
現在、日本はニュージーランドと米国とAEOの相互認証を持ち、日本でのAEOステータスはこれら相互認証国でも"respect"されるはずです。ただし、米国のAEOにあたるC-TPATは米国への輸入のみの条件であり、米国からの輸出での条件がありませんので、故に日本での輸入では対象外となる、いわゆる片肺飛行のような状態です。

日本も将来的にはEUやカナダ、シンガポールなどとのAEO相互認証を検討しています。
この際、どこの国にAEO制度があるかがポイントになりますが、これが面倒くさいことに各国によって呼名が違います。WCOの資料によればAEOに相当する制度を持っている国では現在、以下のように呼ばれています。

  • EU AEO
  • US Customs Trade Partnership Against Terrorism (C-TPAT)
  • Canada’s Partners in Protection
  • Sweden’s Stair-Sec
  • Jordan’s Golden List
  • Singapore’s Secure Trade Partnership
  • Malaysia’s Customs Golden Client
  • Japan’s AEO Programme
  • New Zealand’s Secure Exports Scheme (SES) and
  • China’s AEO Programme

EUや中国は素直にAEOですが、ヨルダンやマレーシアはパッと見てすぐにはAEOとはわかりませんね。今後、各国のAEOの詳細についても取り上げてみたいと思います。

2010/02/25

H-1Bビザ取得前にDeemed Export License 要に

弊社の会社の同僚のExport Law Blogによれば、BCIS (Bureau of Citizenship and Immigration Services) のアナウンスで、H-1Bビザの申請フォームに変更があり、今後はDeemed Export の技術移転がある場合には前もってBISのライセンス取得が必要になりそうだとのことです。(現在、パブリックコメント中) ビザ申請のスポンサーにとっては面倒ではあります。

これは米国の雇用主が対処する問題ですので日本側での大きな手間ではないでしょうが、ビザの申請とBISのライセンス申請を同時進行ではできないことを意味します。以前は実際に技術が移転される前にライセンスを取得すればよかったので、事前にわかっている場合はビザ前に取れよ、ということでしょう。もちろん規制技術のDeemed Export がない、というところをチェックして、技術移転がないということでビザ申請を進めることはできそうです。

ただし、申請フォームではEARのライセンスのみで、DDTCのUSMLでのDeemed Export には何も触れられておりません。これってちょっとバランスを欠いているような気もします。

ひるがえって日本の場合は、日本へのビザで外国人の企業人員・研究員・留学生などのビザと、外為法の技術移転ライセンスでは特に何もつながりはないようです。少しはビザ申請の際に、外為法の技術移転の内容もrefer するくらいのことがあれば、輸出管理の認知度は高まるかもしれませんね。

2010/02/23

シンガポールでTier 3ライセンス取得に成功!

シンガポールでも輸出許可の包括ライセンス制度があります。この度、筆者がアドバイザーとなっているシンガポールのある企業がめでたくTier 3ライセンスをシンガポール税関から認可されました。
シンガポールのライセンスはTier 1 が個別の輸出許可、Tier 2とTier 3がいわゆる包括許可でTier 3が複数品目を複数の登録国向けに使用できる、いわば一番難易度が高い包括ライセンスです。

Tier 3の取得にはICPの保持が必須要件です。このため去年の7月頃からICPの作成、メンバーへのトレーニング、該非判定・エンドユーザースクリーニングのプロセス作り、などなど行ってきてようやくここまでこぎつけました。とても簡単には説明できない色々な質問・レビューがありました。一冊本が書けそうです。(もっとも筆者は日本から出張やメールベースでのアドバイスにとどまり、やはり一番の功労者は現地の私の同僚のマネージャーです。)

Tier 3ライセンスは有効期間3年で、申請から許可まで30 working days とシンガポール税関のWeb site にありますが、実際には1週間でおりました。ただしそれは6ヵ月間だけ有効なApproval-In-principle ライセンスだそうです。もちろんすぐに輸出に使用可能ですが、その6ヵ月の間に税関の実地監査が入るのでしょう。このへんは税関のWeb site に書いてある情報と違って実際やってみないとわからないところです。もちろんいきなり申請したわけではなく、準備段階からシンガポール税関と相談しながらやっていたわけで、それで申請から1週間で認可されることとなりました。

シンガポールはワッセナーのDual-use itemの実質的な輸出管理導入は2008年1月からと、この分野では歴史のある日本に比べると現場レベルの経験やノウハウはまだまだ不足しているという印象です。しかし私自身もよい勉強になりました。

2010/02/22

米国新許可例外 GOV

米国BISのホームページに2月9日付けで新しい許可例外についての案内が載りました。
http://www.bis.doc.gov/news/2010/fr_02092010.pdf

ざっくりと読んでみましたが、あまり一般的に使えそうな許可例外ではありません。
詳しく読んでいないのですが、一読して理解したところでは、 (もし間違っていたらゴメンなさい)

9A004の品目のみに適用され、国際宇宙ステーション向けに、商務省の正規の許可が間に合わないようなケースで(打ち上げ前45日と規定)NASAやそのサプライヤー企業が輸出・再輸出する時に使えるそうです。対象国は国際宇宙ステーションの打ち上げロケットを発射する、フランス・日本・カザフスタン・ロシアのみです。

9A004とは日本語で言えば、人工衛星その他の宇宙開発用の飛しょう体で、輸出貿易管理令別表1の13項(2)、貨物等省令第12条第4号に該当するものです。しかも部分品や附属品にはこの許可例外は使えないそうです。つまり9A004の本体のみ。

といったケースですので、使用する会社は極めてまれでしょう。でも輸出ライセンスが間に合わずに発射が延期なんてシャレになりませんからね。こんなマイナーなケースのために新しい許可例外を作る背景として何か過去に9A004の輸出ライセンスで大きなトラブルでもあったのでしょうか?

米国のEARでは許可例外が本当にたくさんあります。日本の輸出規制も許可例外は多い方です。
輸出規制規制品目自体は国によって大きな違いはありませんが、許可例外は国によって大きく異なります。
一方、アジアの他の国でワッセナーに準じて輸出管理を行っている国もシンガポール、香港などありますが、比較的許可例外は少ないです。ここで困ってくるのが許可例外が少ない国でのライセンス運用です。
シンガポール税関の人が注意を促していたケースとして、日本からシンガポールへの輸出品で、該当品を100万円の小額特例を利用してシンガポールへ輸出し、そこから第3国へ再輸出する場合に、日本でライセンスと取らないで輸出したのだから、シンガポールでも輸出ライセンスなしで良いだろう、という解釈で違反が起こっているとのことです。単なるコミュニケーション不足か法令の理解不足とも言えますが、シンガポール税関がセミナーで公に言及していましたので、稀な事例ではないのかもしれません。特に米国の許可例外のENCとかGBSはかなり多く使用されていますので、でも受け取る側に同様な許可例外がないと、再輸出の場合は輸出ライセンス要となります。受け取る側が再輸出する場合、許可例外を使用して入ってきたものは、ちょっと紛らわしいです。

2010/02/20

HSコードのトリビア

日本の関税率表は、HS条約と呼ばれる国際的取り決めに基づいています。
このHS条約は、1988年1月から発効しており、現在は日本をはじめおよそ136カ国・地域が加盟しています。HS条約の附属書は通称「HS品目表」と呼ばれており、あらゆる商品を組織的・体系的に分類するための品目表です。日本の関税率表は、当然、HS品目表に準拠しています。

上の6桁は世界共通で、それ以降は各国によって異なります。日本の場合、下の3桁を統計品目表の細分番号として使用しています。
(例: 2402.20.000 紙巻たばこ(たばこを含有するものに限る。)

ここまではトレードコンプライアンスをかじっている人間なら誰でも知っていることです。
最近、たまたま仕事上の関連で知りえたHSコードのトリビアを披露します。

1) 日本にないHSコード
HS条約の付属書にありながら日本の関税率表にない品目があります。
それはHSコード2716の電気エネルギーです。税関の関税率表を見ても2715まではあるのですが、2716は確かに存在しません。日本は海に囲まれた島国ですので電力の輸入がありません。
ただし大陸の国々ではありえます。なので他の国の関税率表を見ると2716は多くの国で存在します。
たとえばこんな具合です。

Singapore: 2716.00.00 - Electrical energy MFN Free
USA: 2716.00.00.00 - Electrical energy MFN Free
India: 2716.00.00 - Electrical energy MFN Free

ちなみに日本と同じような環境で他国から電力を輸入しそうにない国ではどうでしょう?
調べてみたところ、オーストラリアやニュージーランドではデーターベースに存在しませんでした。
やはり日本と同様、関税率表に存在しないのかもしれません。(FedEx World Tariff による)

2) HSコード6桁以降の分類がメーカーのブランド別 !
HSコードの上6桁は世界の大半の国で統一されており、それ以降の桁は各国独自の番号であることは述べたとおりです。普通、この下の桁の決め方は客観的な製品の特徴や技術的スペックなどで決められていることが多いです。日本の関税率表を見ても、なんだかよくわからないおもしろくない表現です。
たまたま世界各国のFTAを調べていて見つけたのですが、グルジアのタバコ(HS code 2402) は、これをメーカーのブランド別に分けています。
こんな具合です。

2402.20.900.01 - - - Marlboro 12%
2402.20.900.02 - - - Winston 12%
2402.20.900.03 - - - Camel 12%
2402.20.900.04 - - - Parliament 12%
2402.20.900.05 - - - Knet 12%
2402.20.900.06 - - - L and M 12%
2402.20.900.07 - - - Virginia Slims 12%
2402.20.900.08 - - - Davidoff 12%
2402.20.900.09 - - - Lucky Strike 12%
2402.20.900.10 - - - Gauloises 12%
2402.20.900.11 - - - Magna 12%
2402.20.900.12 - - - West 12%
2402.20.900.13 - - - Pall Mall 12%
2402.20.900.99 - - - Other 12%

これは珍しいです。下6桁以降とはいえ、車や電気製品をメーカーのブランド別に関税分類するようなもので、日本ではありえないと思います。これって知っててもなーんの役にも立ちませんが、へえーというトリビア知識になりませんか?

2010/02/17

中国のCCCとは?

昨年の5月頃ですが、中国のCCCの事が盛んにテレビや新聞紙上でも騒がれていました。
今日たまたまですが、久しぶりにこの件について聞かれたのですが、久しぶりなので内容を少し失念しており、なんだっけなーとあたふたしてしまいした。
よい機会なので過去に自分が簡単にまとめたものを、もう一度以下に書きたいと思います。

CCCとは?
中国強制認証制度 (“CCC” - China Compulsory Certification System) は2002年5月1日に導入されました。この制度は製品安全の認証に関する法的な義務であり、人体への健康・安全、生態系や社会への安全を守ることを目的としています。CCC対象製品の目録によると135製品20種のカテゴリーにおよび、IT・エレクトロニクス、家電、自動車、コンピューター、通信機器、医療機器、照明器具、ケーブル・ワイヤーなどが対象です。

CCC関連の法律と製品目録は、中国国家質量監督検験検疫総局 (“AQSIQ”- General Administration of Quality Supervision, Inspection, and Quarantine of the PRC) により公布され、政府から委託された中国国家認証認可監督管理委員会(”CNCA”- Certification and Accreditation Administration of the PRC)により全国のCCC認証許可業務が運用されています。目録に記載された製品は、中国内でのビジネスにおける製品の販売・輸入・使用にCCC認証が必要となります。ただし、販売に使用しない特別なケースなど認証を必要としない除外規定もあります。

CCC目録にある製品の製造者、販売者、輸入者は、CCC認証をCNCAによって決められた認証機関に対して申請が必要となります。認証機関では定められた認証フローに基づいて、製品のカテゴリーによって以下のような審査内容で認証審査を行います。デザイン査定、モデルテスト、製造現場でのサンプル検査、市場での無作為検査、企業の品質保証システム承認、及び承認後の追跡調査などがあります。

認証機関は認証可否の決定と共に認証レターの発行も行います。通常、認証機関は、申請受付後90日以内で申請企業に対して認証可否の通知を行います。発行された認証レターにより、製品が基準を満たしている証明となり、申請者の名称、製品名、型やシリーズ名、製品の製造者や製造場所、認可モデル、認可基準と技術規則、発効日と有効期限、認証発行機関などが記載されます。認証機関はさらに認証された製品と製造者に対して追跡調査も行い、もし製品が認証された基準に達していない場合には、CCC認証の取り消し、一時停止、撤回を行う権利を有します。


CCCの制度拡充とは?
中国政府はCCC認証制度を2009年5月1日より情報セキュリティ製品へも適用を拡大を予定していました。その対象品目の目録は、ファイヤーウオール、VPN、セキュアルーター、OS、アンチスパムメール製品、ネットワークセキュリティシステムなど13品目の情報セキュリティ製品に及んでいます。しかし各国政府や外国IT企業の強い反対から、CCC制度の追加13品目への拡大は1年後の2010年5月に延期され、さらにその対象は政府調達法の範囲に限定するとされました。しかしながら、当初から心配されていた知的所有権や企業機密保護への懸念は依然として残り、認証所得プロセスでは製造現場での検査、政府指定の研究機関でのテスト、中国独自のセキュリティ基準遵守などの規定などの問題は手付かずのままとなっています。


IT企業が抱える懸念とは?
海外企業がこのCCC制度について直面している問題は、認証を所得するのに工場が中国外にある場合は、6ヶ月から1年の期間を要する点です。時間がかかる理由としては、中国は初回の工場検査については、海外での検査機関による相互認証を認めていない点によります。これは外国IT企業にとっては大きく不利な点となります。また、CCC認証のITソフトへの拡充に関しては、対象となる製品の定義が曖昧であり、企業はその対象製品の範囲がどうなるのかに不安を持っています。海外IT企業にはまた、どのような情報開示が求められ、その企業機密が中国当局によるテスト期間にどのようにして保護されるのかも不透明です。中国の政府調達に関るビジネスを行っているIT企業には、自社製品の知的所有権に関する大きなリスク、および中国基準での認証で万一取得が遅れれば、販売活動停止を余儀なくされるリスクにさられてています。

(Sourece: http://www.bryancavetrade.com/sitebranches/publications/alerts.html )

2010/02/16

シンガポールも4月1日から輸出管理リストを改正

シンガポール税関が輸出規制リストの改正を4月1日に行うと発表しました。

http://www.customs.gov.sg/stgc/leftNav/str/Updates.htm

これは日本と同じく、ワッセナーの2008年12月の合意内容を国内規制に反映するものです。
これで昨年12月に反映済みのUS EARや、今月に反映した香港のShcedule 1のリストとも同期がとれて、スッキリします。

2010/02/15

Toiya arrangement とは?

筆者は米国のLaw firm のInternational Trade 部門の中で仕事をしてまして、実は唯一の日本人です。自身の専門はexport control や customs compliance なのですが、日本人だからという理由で日本に関するありとあらゆる専門外のことを「とりあえずヤツに聞いてみよう」ということで海外の同僚から聞かれます。

最近、聞かれて初めて知って勉強になったのは、日本の "Toiya" arrangement というシステムです。
英語で聞かれると最初は何のことかわかりません。

米国人弁護士: 「日本には"toiya" arrangementってあるらしいが、お前は詳しいか? セールスエージェントかディストリビューターみたいなものらしいけど。」
私: 「toiya?? 知らない。Tonya でしょ? それならdistributor のことだよ。発音間違いじゃないの?」

こんなやり取りをしたのですが、実はよく調べると「といや」と「とんや」は漢字で書くと同じ「問屋」ですが、実は法的には違ったことを指しています。

一般的に「とんや」は誰でも知っている卸売り業者のことです。しかし、「といや」は Wikipedia によると;

問屋(といや) - 取次営業としておこなう商人のひとつ。
商法で、自己の名をもって他人のために物品の販売又は買い入れをすることを業とする者と定義されており(商法第551条)、問屋の行う売買は他人の計算においてなされる。つまり、問屋は自己の名義で取引を行い取引の相手方に対する権利義務の主体となるが、その取引による損益は委託者に帰属する。問屋の収入は、取次の引受けに対して委託者が支払う手数料である。一般的意味における問屋(とんや=卸売業)は自己の計算で商品を買い入れ、販売しているので、法律上の問屋ではない。
問屋営業の典型例として、証券会社における証券の売買仲介(ブローカレッジ)があげられる。

また、商法でも「といや」はきちんと定義されており、商法551条から558条までが、「といや」営業に該当します。

ということで、私自身が商法を知らないとんだ間抜け野郎だということでした。
日々勉強です。。。

FTA原産地規則無料セミナー開催

JETRO様のシンガポール支店主催により、今年度、「FTA/EPA基礎講座」と題し、過去3回、「FTAの基本」、「原産地規則」、「アセアン・インドFTA」を取り上げ、シンガポールにてセミナーを開催してこられました。3月2日に本シリーズ最終回のセミナーがあり、そのテーマは、「“アセアン+1”FTAと原産地規則」です。

この3月2日のセミナーの講師は私の会社のシンガポールの同僚である、ステファニー・ウオン (Stephanie Wong) が努めます。彼女は元シンガポールのMTIでFTAの政府間交渉に携わってきた、いわば「FTAのプロ中のプロ」です。今回はアセアン関連の原産地規則に関するプレゼンとのこと。
参加は無料ですし、アセアンのFTAのご関心のある方はぜひ参加をお奨めします。

日時: 2010年3月2日(火) 09:00〜12:00
場所: シンガポール  ランデブーホテル(Rendezvous Hotel)Straits Ballroom(2F)
議題: 【ジェトロ】アセアン+1”FTAと原産地規則解説セミナー「自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)基礎講座(最終回)」
申込み: https://www.jetro.go.jp/form/fm/spr/epa100302
詳細: http://www.asiax.biz/event/2010/02/100211.html

2010/02/12

暗号製品の輸入にライセンス必要??

ずいぶん前のことですが、私のボスである米国人Trade Lawyer と輸出管理について雑談をしていたときに変なことを聞かれました。

ボス: 「ところで日本に暗号製品を輸入するときは輸入ライセンス必要なんだよね?」
私:  「えっ、そんなことないと思うけど。日本では輸入貿易管理令で確かに輸入でライセンスが必要なものを確かHS code でリストしていて。でも、その中に暗号製品はなかったと思うな。」
ボス: 「ああ、そうだっけ。でも確かにどこかで聞いた覚えがあるんだけどな。。。」

暫くしてから別のシンガポールの友人から似たようなことを聞かれました。日本にワッセナーのDual-Useの戦略物資を輸入するときにライセンスが必要なのか?と。

彼らが理解していたのは、実は香港の輸出管理規制でした。香港ではワッセナーのdual-use 該当品は輸出だけでなく、輸入にもライセンスが必要になります。
米国人のボスは、日本と香港を混同していたのですね。別のシンガポールの友人は、日本にも香港と同様なシステムがあるのかどうか聞きたかったわけです。

特に香港では、暗号製品 (Categroy 5 - part 2) については、Schedule 2 にも記載があって、積替えのときでも輸入・輸出のライセンスが適用除外になりません。これは核関連品とか化学兵器とかと同様な厳しい扱いです。もちろん個人利用とかマスマーケットとか許可不要要件はあるのですが、香港の暗号製品規制の厳しさは輸出管理に携わる人たちに強い印象を持たれているようです。

2010/02/04

ITARから手を引けば罪を軽くしてやる

2月3日付けの米国国務省のプレスリリースで、ドイツ企業のInterturbine Aviation Logistics Gmbhと、そのテキサス支店が、ITARの違反で総額100万ドルの民事ペナルティを払う、というニュースがありました。

米国では輸出関連の違反のニュースはとても多いのでそれ自体は珍しくないのですが、このニュースで目を引いたのは、
US$400,000 will be suspended on the condition that Interturbine maintains its self-initiated exclusion from all ITAR regulated activities というくだりです。

つまりITAR関連のビジネスから自分から進んでやめれば民事ペナルティのうちの40万ドル分は猶予してやる、ということです。
Voluntary self-disclosure で罰金が軽くなるとか、外部コンサルタントを雇って監査を実施する条件を付するとかいうパターンはよく聞きますが、今回のこのパターンはあまり目にしません。珍しいので読んで記憶に残りました。会社の米国人の同僚は自身のブログでこの件を、「被告が自殺したので検察が死刑求刑をやめたようなもの」と言っていますが、まさに言いえて妙です。

Resource: http://www.state.gov/r/pa/prs/ps/2010/01/136451.htm

2010/02/02

日本のリスト改正再び

1月28日付けのMETI web site で、輸出管理の別表一のリストの改正がパブリックコメントに出されていました。つい昨年の12月にもワッセナーの2008に準拠したリスト改正が出されて今年の4月から施行ですので、またか!という印象です。

内容を見て驚いたのは、コンピューターではワッセナー2009年12月の合意内容がもうすでに反映されていたことです。APPが0.75WTから1.5WTに (4A003.b)  また、データー転送装置のスペックでは転送速度が1.25Gbyte/s から2.0Gbyte/s に (4A003.g) それぞれ緩和されていました。

普通、ワッセナーのリスト反映は1年くらい間をおいてから国内法に反映されるのですが、今回は早くて驚きです。とはいっても全てが反映されているわけでもないらしく、例えばワッセナーカテゴリー5 - part 2の暗号では、Exemption note 4 (副次暗号)に相当するものは見当たりませんでした。

ざっとしか目を通していないので内容に間違いがあるかもしれませんし、全容は見えていないですが、今後のなりゆきを注視したいです。

2010/01/30

シンガポールの米国輸出管理セミナー


今週は、1週間シンガポールに出張で、1月28日にシンガポール税関主催の米国輸出管理セミナーでプレゼンスピーチをしてきました。(壇上のスピーカーが筆者です。)

1日フル(9時 - 16時くらい)のセミナーで、前半はBISのオフィサーから米国輸出管理EARの概略、後半の午後はITAR、シンガポール輸出管理の注意事項、民間各社からの実際の経験談スピーチ、といった流れです。私のプレゼンの部分は最後の経験談の部分で約15分でした。
参加者はシンガポール税関の人によれば約500人とのこと。

対象はシンガポールの企業なので、全て英語で行われました。日本語でも緊張するのに、英語でのスピーチとなるとそれ以上に緊張です。おかげで用意したメモをただ読んでいるような感じになり、なんだかパッとしないプレゼントなってしまいました。。。。

とはいえ、日本人が来て米国輸出管理についてプレゼンするのは珍しかったからでしょう。セミナーの最後では、日系企業のシンガポール法人で輸出管理に従事している方や、日本法人の輸出管理で困っている外資企業の方などなどからお話をお伺いすることもでき、有意義な1日となりました。
あと、良かったのは以前勤務していた会社のシンガポールの友人たちも偶然このセミナーに参加しており数年ぶりに再会できたこと。これは嬉しかったです!

セミナーではやはり聴講者としてではなく、スピーカーとして参加する方が自分のためになります。
今年は主に海外でのセミナーにプレゼンターとして話をする予定が多くありそうです。

2010/01/22

4月から全輸出者にCPを義務付け???

今日、海外の私の友人からある質問を受けました。それがちょっと日本の輸出管理に関して間違った情報でしたのでコメントしておきました。ある超大手のコンサルティングファームのTrade Bulletin ですが、日本の輸出管理動向に関して以下の文章が書いてありました。

Implementation of internal export control compliance programme (CP) requirement for all exporters

Under existing practice, only exporters who wish to obtain bulk export licenses are required to submit a CP to the Ministry of Economy, Trade and Industry for approval.
However, in the revision of the Japanese Foreign Exchange and Foreign Trade Law (FEFTL), effective from 1 April, 2010, all exporters will be required to implement CP...... (以下省略)

最近の外為法改正をきちんとフォローしていらっしゃる方ならすぐにお分かりかと思いますが、確かに今年の4月1日から、輸出者等遵守基準が、外為法第55条の10に基づいて実施されます。
しかしながらこれは全ての輸出者にCPを義務付けるわけではありません。あくまで守るべき基準を示しただけで、それを守らずに目に余るようなら指導・助言・勧告・命令と進んでいくわけですが、この文書を書いた人は、CPと遵守基準を少し混同しているようです。

また普通に考えればすべての輸出者にCPを義務付けてMETIに届出をさせるなんておかしいと思わなければいけません。外為法の第1条の「目的」である「対外取引の自由、必要最小限の管理又は調整」と齟齬をきたしそうですし、輸出に実質的に政府の認可が必要な発展途上国のような管理貿易になってしまいます。実務的に考えても本当にすべての輸出者にCP届出が必要となると、METIの窓口業務が破綻してしまいそうです。

これを読んだ海外の私の友人は、全輸出者にCPを義務付けなんて本当か? インパクトが大きすぎない?って聞いてきました。きちんと説明しておきましたが、超大手のコンサルなのに日本の輸出管理のニュースに関しては少し内容がお粗末すぎるなあと感じました。
とはいえ、人間誰でも間違いは必ずあります。私自身もセミナーやブログで間違ったことを言うでしょう。反面教師にしたいものです。

2010/01/21

認定輸出者自己証明制度について

今日は経済産業省の方から、原産地証明の認定輸出者自己証明制度についてお話をお伺いする機会がありました。

この制度は昨年2009年9月からの日本スイスEPAの導入により開始された制度です。

簡単に説明すると、EPAの特恵税率を適用するためには原産地証明書が必要ですが、日本ではこれを今までは日本商工会議所にて発行していました。(これを第3者認証制度と言います。)

これを輸出者が自社で発行する制度です。これにより証明書発行の毎の手数料とかリードタイムや手間が少なくなります。ただし初期登録の登録免許税として9万円がかかります。また有効期限は3年間なので更新が必要です。その更新手数料が5,000円必要です。ですので認定資格として半年で8回以上の実績が要件となっています。とはいえ利用件数が多くて申請が度々の企業にとっては朗報です。
もちろん違反や虚偽の申請があればペナルティがありますのでコンプライアンスをしっかりすることは重要です。

EUが締結しているFTAではこの制度は広く取り入れられています。日本スイスEPAは、日本が始めてヨーロッパの国と結んだEPAなので、この制度を初めて採用したのでしょう。
この制度の概要と手続きはMETIのweb site にとても綺麗な資料があるのでご覧下さい。

http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/epa/html2/2-torikumi3-switzerland.html

すでにこの認定輸出者の資格を取った企業さんは、数は多くはありませんが、実際にいらっしゃるそうです。

また、METIとしてもこの制度は広く活用を進めていきたいそうですので、今後締結されるEPAにも採用されることを期待しましょう。


2010/01/20

外為法の行政制裁

1月19日付けで経済産業省より、外為法に違反して北朝鮮に輸出した人に行政制裁の輸出禁止(16ヶ月)が科されたニュースリリースが出ました。この外為法第53条に基づく行政制裁は、違反した貨物のカテゴリー・輸出先だけでなく、全地域・全貨物が対象になりえますので、輸出企業にとっては第69条の6の罰金・懲役よりも怖くてインパクトがあると思います。
http://www.meti.go.jp/press/20100119002/20100119002.html

今回発表された行政制裁は「同法第53条第1項及び第2項に基づき」とあります。第1項と第2項の違いは要約すると以下のようになります。

第53条第1項: 第48条1項(貨物の輸出)の違反で最大3年間の輸出禁止
第53条第2項: 前項に規定する以外の貨物の輸出入の違反で、最大1年の輸出禁止

なので、通常、安全保障上の無許可輸出(第48条1項)の行政制裁なら第53条でも1項だけですが、今回は北朝鮮へのタンクローリーの輸出(大量破壊兵器キャッチオール違反)だけでなく、中古車やピアノの輸出も違反でした。
タンクローリーの輸出は外為法第48条1項(輸出貿易管理令第1条の”許可”を取らなかった違反)で、
中古車やピアノは、第48条の第3項(輸出貿易管理令第2条の”承認”を取らなかった違反)となります。

もし承認をとらずに輸出の行政制裁(この場合中古車とピアノなど)だけなら最大1年ですが、今回はタンクローリーが第48条1項の違反なので最大3年まで、で、結局16ヶ月(1年と4ヶ月)ということになりました。

輸出管理を勉強するときは、METIからのアナウンスの、第xx条の第xx項に基づいて、をよく理解して読むと法令の正確な理解に役立ちます。

2010/01/18

米国のFirst Sale ルール

米国の”Washington Tariff & Trade Letter" 1月4日号によれば、"First Sale" 評価ルールは産業界がクレームしたほど実際には使用されていない、という記事がありました。
これだけ読んでも話の背景を知らないと??な記事です。この話の経緯は以下のようになります。

米国のFirst Saleルールとは、1996年から採用されたルールで、ちょっと乱暴な説明ですが、こんな感じです。米国の輸入者が貨物を輸入する際に、実際に輸入者が最後の売り手に支払う価格ではなく、製造者が例えば仲介者に支払う価格を米国への輸入申告価格とし、故に関税が安くなる、というルールです。

例えば中国の工場で作られ米国へ輸出される貨物を、中国の製造主から直接買うのではなく、日本の商社を通じて米国の輸入者が買うケースです。実際には日本の商社は仲介コミッションを得るので中国の製造主が売る価格 (First sale) は安いはずです。日本の商社に支払う価格 (Last sale) ではなく、 このFirst sale 価格を基準に関税をかけるというやり方です。もちろんいくつか満たすべき条件はあって、販売は独立当事者間価格 (an arm's length price) であり、貨物が直接米国へ輸出されるとかあるのですが、米国の輸入者にとっては関税が安くなるので良い話です。

このFirst sale ルールを廃止しようという話がCBP (Customs and Boarder Protection)から2008年1月に出されていました。ところが米国の産業界は、これを廃止すると関税が高くなり輸入コストが上昇するので、当然ですが反対大ブーイングの嵐です。それで2008年8月にはいったんCBPはこの話を引っ込めることになり、一方、米国議会は暫くどのくらい実際に使用されているのか統計をとって観察しよう、という命令を出していました。

ここでITC (International Trade Commission) が昨年12月23日付けのレポートで、そのFirst sale ルールの実績を発表しました。それによると2008年9月から2009年8月までの間の統計では、First sale ルールを使った輸入者は全米で23,520の輸入者のみで、これは全体の8.5%だそうです。また、金額ベースでは2.4%に留まり、クレームの声が大きかった割には実際の数字はそんなに大きくないね、という話です。First sale 反対者の多くは、関税率の比較的高い製品であるアパレルや靴を扱う業者や小売業界です。この話が今後どう進展するのかcustoms compliance の立場から非常に興味がありますので注視していきたいと思います。

2010/01/15

環境と貿易

昨日は、「環境と貿易に関するシンポジウム」を聴講してきました。
企業の実務家にとっては環境と貿易といってもまだピンとこないかもしれません。
しかし環境問題はWTOでもプライオリティの高い事項であり、専門家の方々を巻き込んで真剣な議論がなされています。将来的にどう貿易実務に関連してくるのか、いくつか実例とその問題点をあげます。

  • 環境製品と関税: 環境に良い製品の関税を撤廃あるいは安くする。環境に悪いあるいはCO2排出の多い製品の関税を高くする。これは環境保護の方向性には合致する政策ですが、実務的にどうするのかは非常に頭の痛い問題です。何を基準に環境に良い製品と悪い製品を識別するのか? CO2排出の多い国の原産品は関税を高くする? エコフレンドリーな製品の性能やスペックで関税を決めるのか? 環境関連の用途やプロジェクトに使用されるなら既存製品も関税を安くするのか? ある国で環境関連で補助金が出たら、その国からの輸出製品に対して相殺関税を課すことを認めるのか? 悩みは尽きません。
  • Carbon Leakage (炭素漏出): 排出規制が厳しくない地域に産業が移転してしまうこと。結果として地球全体の排出量が増加する可能性もあります。現在は税金が安い国に産業が移転することはよくありますが、同様にサプライチェーンが環境規制によって影響を受けることも考えられます。
  • HS code も定期的に改正があり、前回のHS2007の改正はちょうど3年前になりますが(オヤジになると時間が過ぎるのが早いので)記憶に新しいところです。WCOのアナウンスでは次回は2012年です。ここでもモントリオール議定書の ozone depleting substancesのsub-heading が新たに追加されることが決まっているなど、環境問題はHS classification の変化にもつながっていくでしょう。
まだまだ国際的な枠組みをどう作るか議論がされている段階ですので、すぐに実務でどう対処するとかいう話ではありませんが、将来を見据えて気長にwatching していきたいと思います。

2010/01/14

Voluntary Self-Disclosures

Voluntary Self-Disclosures ("VSD")という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。
違反した場合の自主開示のことで、輸出管理の世界では、特に米国で、多く見受けられます。

VSDの概要についてはBISのweb site に出ています。BISも、企業で違反があって認識した場合には、このVSDを推奨するという立場です。これによりペナルティもかなり減額されることになります。(BIS affords the submission of a VSD "great weight" in assessing and mitigating the penalty)
http://www.bis.doc.gov/complianceandenforcement/index.htm#vsd

実際にはVSDを提出しても全てがペナルティというわけではないようです。
(FY2005の例: 全体の97%は違反なし又は警告書ですみ、内訳は55%が違反認定なし、42%が警告書のみ)

ペナルティとなってしまった場合の事例も企業名・金額と共に公開されています。この数字を分析してみると、どのくらいVSDによってペナルティ金額が減額されるのか様子がわかります。実際に支払った金額とそのケースでのMaximum ペナルティの金額を比較してみました。

  • FY2007: ペナルティ17件で、VSDにより平均でMaximum ペナルティの33%まで減額
  • FY2008: ぺナルティ12件で、VSDにより平均でMaximum ペナルティの37%まで減額
  • FY2009: ペナルティ17件で、VSDにより平均でMaximum ペナルティの19%まで減額
    (2009年の数字が低いのは1件だけ3%まで減額されたケースがあるからです。これを除いた16件の平均では平均34%となります。)

一般的にVSDによってざっとペナルティは半分になると言われてきましたが、過去3年分のケースを分析すると、概ね平均30%台ですので、それは裏付けられたと言えるでしょう。もちろんケースバイケースであり、VSDにも関わらずMaxの96%のペナルティがあったケースもあります。これはイラン向けという案件の機微度、知りながらに違反した、かつVSDで嘘や不正確な証言をしたことなどが原因です。

さて日本の輸出管理でのVSDはどうなっているのでしょう? 私の知る限り、米国のような数字の統計は経済産業省からは出ていませんが、ガイドラインはあります。

http://www.meti.go.jp/policy/anpo/kanri/jishukanri/main.html
(不正輸出の通報関連  の 安全保障貿易に関する不正輸出の審査手続き pdf )

日本でも内部監査等に基づく自主的通報は、処分又は調査内容において、何らかの考慮はされるようです。経済産業省の事後審査に協力的か否かも、処分決定の考慮要因となります。

2010/01/13

Asean-India FTAの発効とその特徴

Asean-India Free Trade Agreement ("AIFTA")が2010年1月1日から発効しましたことは、年末年始に新聞紙上にAsean-China FTAやAsean-Australia New Zealand FTA などと一緒に取り上げられることが多かったので、概要はご存知の方が多いと思われます。

Asean はChina, Korea, Japan, India, Australia New Zealand とFTAを締結済み、そしてEUとも交渉中であることから、まさにAseanを中心に各経済圏と関税削減を行っていることで、グローバルな物のやりとりを計画する上で、今後ますますAsean はサプライチェーンのハブの役割を担うことになります。
AIFTAによりタイとインドの間で、関税品目数ベースで80%、貿易金額ベースで75%の品目の関税が即時撤廃され、2013年から2016年にかけて対象製品の関税をゼロにします。
一方、一部の農産品を含む489品目は関税削減の対象外となっています。

日本の新聞紙上では一般的な知識だけの報道ですが、ここではAIFTAの少し実務的な情報をAsean-Japan EPA ("AJCEP")との比較を交えて載せてみます。

  • 現在の発効国: アセアンの10カ国全部で発効しているわけではありません。2010年1月現在では、AIFTAはシンガポール・タイ・マレーシアと、相手国のインドのみです。その他の国は国内法令の準備が整い次第、ということになります。ちなみにAJCEPでは、2009年12月では、インドネシアとフィリピンを除いた他の国ではすでに発効しています。
  • 原産地証明書: 第3者証明方式で、フォームAIという証明書が必要になります。ちなみにAJCEPだとフォームAJですので、FTA協定によって原産地証明書のフォームも異なるので注意が必要です。発行機関は各国の公的機関で、例えばタイではタイ国際貿易局です。
  • 原産地ルール: 一般ルールはRegional Value Content (RVC)でFOBの35%で、HS code 変更基準だと 6桁の変更 Tariff Sub-Heading (CTSH) です。(ちなみにProduct Specific Rules (PSRs)はまだfinalize していないとのこと、そんな悠長なことでいいのかな?) AJCEPだとこの一般ルールは、RVC40% or HS code 変更4桁のCTHと異なっています。なので、もしタイで作った同じ製品でも、適用するFTAで一方は原産地資格OK, 他方はダメということもありえてしまいますね。
  • "Third party invoicing" や"Back-to-Back CO"の規定あり。これはAJCEPも同じ規定が存在します。ただしBack-to-Back COは国によって発効基準が違うことがあるので発行国に確認が必要。多くの国では税関の監督下にない限り発行はしない運用ですが、シンガポールは若干弾力的な運用で、通関後の貨物でも実施的な変更がない限り、Back-to-Back COを発行しているそうです。AIFTAでも同様な運用になると思われます。

2010/01/12

武器輸出の適用除外トリビア知識?

本日1月12日付のニュースで、防衛相が武器輸出三原則の見直しの為に政府内で議論に前向きな姿勢を示した、という内容が伝わっています。武器輸出三原則は、たとえ自社の製品や技術が武器とは関係ないにしても、輸出管理担当者の知識としては知っておくべき事項でしょう。

武器輸出三原則とは? (外務省HP)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/arms/mine/sanngen.html

経団連からの武器輸出三原則見直し提言 (2009年7月)
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2009/064.html

原則や方針は上記URLを読めばわかることですが、輸出管理ライセンスマネージメントの為に、以下少し実務知識の補足です。

武器は輸出貿易管理令別表一の1項に該当します。またその技術は外国為替管理令別表1項で規制されています。どこの国に輸出するにしろ該当製品や技術は経済産業省の輸出許可が必要になります。ただし現在はこの武器輸出三原則の立場から、返品や修理の為の輸出以外は原則、申請しても許可が下りない運用がされているはずです。

また通常、輸出規制は該当製品・技術でも適用除外で輸出許可不要になるケース(使用目的や金額など)があるのですが、こと武器の1項に関してはそれが原則ありません。製品の除外特例を規定した輸出貿易管理令第4条でも冒頭に、「ただし別表1の1の項の中欄に掲げる貨物については、この限りではない。」とありますし、技術の除外特例を規定した貿易外省令第9条でも一般企業が使えそうな特例はほとんど告示で1項の武器は「除外の除外」となっています。

ただし、1項の武器でも外為法の輸出許可適用除外ができるケースもあります。それは日本駐在のアメリカ軍とその関連機関です。これは常識で考えれば、そりゃそうだろって感じですが、ちゃんとその法律的な裏づけをきちんと指摘できる人は少ないと思います。

その法的根拠は、「日本国とアメリカが週国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う外国為替令等の臨時特例に関する政令」です。これを略して通称で「臨特令」と呼んでいます。

物品の輸出に関してはここの第10条で、合衆国軍隊とその関連施設(軍隊の構成員、軍属、その家族、軍人用販売機関等、軍事郵便局、軍用銀行施設及び契約者等)は外為法第48条の輸出貿易管理令・輸入貿易管理令の義務又は制限を免除する、とあります。

また、技術の輸出に関しては、この臨特例第9条で、外為法第25条第1項の義務を免除する、とあります。(実はこの”技術の”輸出のアメリカ軍による除外特例、つい最近の2009年8月14日に改正で付け加えられています。これは昨年の外為法の改正に合わせて外為令を改正したのと同じタイミングでした。つまりそれまではアメリカ軍による技術輸出は外為法上の適用除外ではなかったわけですね。うっかり忘れていたのでしょうか?)
http://hourei.hounavi.jp/hourei/S27/S27SE127.php

と、色々と書いてきましたがこの臨特令、アメリカ軍関連の仕事をしていない限り、日本の一般企業の輸出管理では関わる人はほとんどいらっしゃらないでしょう。知っていても何も役に立たないトリビアな知識ということで。。。

2010/01/08

アフリカのニジェール - ほとんど禁輸国扱い

DDTCから昨年末に出たアナウンスで、アフリカのニジェール向けのITAR輸出ライセンスはおそらく発行されないか、とんでもなく長ーく時間がかかるのでご留意を、とあります。

http://www.pmddtc.state.gov/licensing/documents/CI_Niger.pdf

ニジェールは今まで特に禁輸国・制裁国でもないし、国連武器禁輸国でもありませんでした。
今回は現職大統領が自身の任期を伸ばす為に憲法の改正を目論み、それに伴う混乱に対するアクションだそうです。

日本でITAR品目を扱ってDDTCのライセンスを必要とする方はかなり少ないと思いますが、ニジェールにはご注意を。

2010/01/07

輸出管理の法令集の改訂版がついに発売に

輸出管理に携わる人なら(ほぼ)誰でも持っていると思われる法令集の改定版がついに今月1月25日に発売になります。

安全保障貿易管理関連貨物・技術リスト及び関係法令集【改訂第15版】
http://www.cistec.or.jp/publication/shoseki/a02_houreisyuu.html

ようやくというか、すごく待ち望んでました。というのは、現行の14版は平成20年5月発行です。
それ以来、通常兵器キャッチオール規制、外為法の改正、リスト規制の改正などなど多くの改正が続き、その度に追補版や個別事項の解説本で補ってきましたが、ようやく1冊の本にまとまりそうです。

とはいえ、今年4月1日のリスト規制改正はこの本に反映されるはずもなく、それは次回にってことですね。
リストの改正はほぼ毎年ですのでこれは宿命と思い受け入れるしかありません。。。

2010/01/06

同僚が米国商務省のAssistant Secretaryに

筆者の勤務している会社の米国ワシントンオフィスのパートナー弁護士で、筆者と共に輸出管理の仕事をしていたケビン・ウオルフ氏が米国商務省のAssistant Secretary, Export control administration のポストに任命されました。たぶんBIS (Bureau of Industry and Security)の輸出管理の仕事ですね。
ホワイトハウスのweb site にも先月正式に発表されています。

http://www.whitehouse.gov/the-press-office/president-obama-announces-more-key-administration-posts-121709-0


ケビン氏はオバマさんの選挙戦のときから熱心にサポートをしてました。オバマさんと一緒に取った写真とか(最初はお笑い芸人のノッチかと思いましたが・・・)オバマさんの演説を裏舞台から撮った写真とかをFacebookにアップしています。昨年、東京に来て一緒にディナーを共にしたときに嬉しそうに見せてくれました。雨の中でのオバマさんの演説の写真が結構かっこいいです。
オバマさん応援の甲斐あって、見事に自分の専門を生かした商務省の重要ポストに就任です。

ただし個人的には彼と今までのように一緒に仕事をできなくなるのではないかと、ちょっと残念ではあります。きっと商務省の方の仕事が忙しくなるでしょうから!

2010/01/05

米国の関税評価基準はFOB

ちょっと気になることがあって米国の関税法について社内の資料を調べていました。
そこでおやっと思った記述がありました。それは・・・

Entry of Goods - Valuation
Transaction value is the price actually paid or payable to the seller, excluding international freight, insurance and other CIF charges, plus following ・・・

あれ、including じゃないの?つまりCIFベース。日本の関税評価基準はCIFベースで課税ですよね。
excluding ってことはつまりFOBベースに課税ってこと? でもその他の加算要素の説明は日本のと一緒だぞ。

あとで少し調べたらFOBが基準だってJETROのweb site にも書いてありました。

http://www.jetro.go.jp/world/n_america/us/trade_03/

そういえば忘れていました。確かオーストラリアの友人がうちはFOB基準に課税だよって言ったいたのを思い出しました。アジアのたいがいの国がCIFベースで課税だと認識してたので、どの国もそうなんだとついうっかりしてました。反省。

(追記: 1994年の関税及び貿易に関する一般協定第7条の実施に関する協定で以下の通り定めてあります。
この第8条第1項で、「・・・課税価格の決定にあたっては (中略) 現実支払い価格に次のものを係る額を加算する。」 ここで、仲介料、容器、包装、金型、ロイヤルティやライセンス料などありますが、第2項で「各加盟国は、自国の法令の制定に当たり、次の費用の額 (中略) を課税価格に含めるか含めないかについて定める。」 ここに (a) 輸入港までの運送費用や (c) 保険に係る費用 とあります。
なのでこれをもとに、各国で課税基準がFOBなのかCIFなのか違ってきます。

2010/01/04

香港の輸出管理リスト変更

昨年の11月13日に香港では輸出管理品目リストの変更が発表されました。これはワッセナーの2008年12月の合意品目やAustralia Group,MTCR, NSGの改定を自国リストに反映させる改定です。
これが今年の2月4日から実際に適用されることになると年末に発表がありました。
ほぼ同様の改定はEU, US EARではすでに2009年内に実施スミ、日本でもほぼ同様の改定が今年の4月1日から施行される予定になっています。

ところで海外の友人でグローバルヘルスケアカンパニーでTrade compliance をやっている人からこの香港のリスト改定に関して2B352のUpdateは反映されてるの?って質問がありました。
2B352って何でしょう? これはAustralia Groupで輸出管理品目として合意された品目で生物・化学兵器の製造にも転用できる製造装置関連品です。具体的には発酵槽、遠心分離機、凍結乾燥器などなどいかにも北朝鮮が欲しがりそうな装置で、日本の輸出貿易管理令では別表1、3の2項にリストされています。

この友人が私に聞きたかったのは、Austrial Group で最近合意され、EUとUSで昨年すでにリスト改正された、2B352.d.1.b.2の以下の変更が香港のリストであるかないかでした。


2B352
(Old) – only b.1
d.1.b.1. Capable of being sterilized
or disinfected in-situ;

(New) – b.2 is added.
d.1.b.1. Capable of being sterilized
or disinfected in-situ; or
d.1.b.2. Using disposable or singleuse
filtration components.


日本の省令(第二条の二、四)では同様部分が以下のようになる予定です。
”クロスフローろ過用の装置であって、次のイ及びロに該当するもの・・・(中略)・・・
ロ、次の(1)又は(2)に該当するもの
(1)定着した状態で内部の滅菌又は殺菌をすることができるもの
(2)使い捨ての部分品を使用するもの

日英両方ともそれぞれ太字の部分が改正部分です。ようは使い捨て部分品が新たに規制対象に加わったということです。
これはAustralia Group の合意なので参加国はそれぞれ各国の国内法令に反映させるはずです。
(注:香港は正式には参加国ではないが、ほぼ同様の規制を持っている。)
ところがこれ、2B352のこの部分の改正がなぜか香港の今度の改正リストには載ってないんですね。
それで友人が私に聞いてきたわけですが、その主な理由は、香港は輸出管理規制品目は輸出時だけでなく、輸入時にもライセンスが必要になる変わったルールを持っているのでグローバルにモノをやり取りする企業は香港のリスト改正はたとえ香港からの輸出がなくても気になってしまうわけです。

香港のリスト改正部分抜粋の記述を何度見ても2B352が載ってないんですね。
http://www.gld.gov.hk/cgi-bin/gld/egazette/gazettefiles.cgi?lang=e&year=2009&month=11&day=13&vol=13&no=46&gn=226&header=1&part=0&df=1&nt=s2&newfile=1&acurrentpage=12&agree=1&gaz_type=ls2


なんででしょう。何かお気づきの方がいらっしゃったらコメント頂ければ幸いです。

(追記)ここで言いたかったのは、レジームの合意内容の国内法令への反映は、国によってあるいはレジームや項番号によって、違いが出てくることがありますので、必ず項目ごとにケースバイケースで確認をすることが大事です。

2010/01/01

はじめに

筆者は主に外資系企業でトレードコンプライアンス(Export control & Customs compliance)に携わってきました。日本の企業では安全保障貿易管理とか関税コンプライアンスなどと言われている分野です。

日本の企業ではこの分野は主にIn House で自社の正社員が行っていますが、外資系企業ではリソースの問題でTrade compliance manager はいても少人数、又は全く手付かずの企業も多いのが現状です。また、ビジネスの規模が小さいとフルタイムで専門の正社員を雇う余裕もありません。あるいは外国人のExpatriate がLegal counsel として業務の一環で見ているという形も多く見受けられます。
ですので必要に応じてLaw firm やConsulting firm にアウトソースする形態が合理的です。

また、日本の企業も海外のマーケットに出て行けば、現地では外資企業になります。その際には日本の本社で社内で得られていたような情報やサポートも、日本にいる時のように簡単には得られません。
そんなときも各国のローカルの専門コンサルタントにサポートを依頼するのが賢い方法です。

現在、筆者は米国のLaw firm の東京オフィス代表として、主に外資系企業への輸出管理コンサルティングサービスを提供しており、その経験や日々の学びをブログにアップし、少しでも多くの方々にトレードコンプライアンスの重要性を知って頂きたいと思い、このブログを開始しました。

ブログなので思いつくままに気づいたことを日々アップしていきます。ちょっと長めのTwitter ぐらいに考えて下さい。
感想や質問などありましたらコメント頂ければできる範囲でお答えします。
それではよろしく御願いします。