2010/01/30

シンガポールの米国輸出管理セミナー


今週は、1週間シンガポールに出張で、1月28日にシンガポール税関主催の米国輸出管理セミナーでプレゼンスピーチをしてきました。(壇上のスピーカーが筆者です。)

1日フル(9時 - 16時くらい)のセミナーで、前半はBISのオフィサーから米国輸出管理EARの概略、後半の午後はITAR、シンガポール輸出管理の注意事項、民間各社からの実際の経験談スピーチ、といった流れです。私のプレゼンの部分は最後の経験談の部分で約15分でした。
参加者はシンガポール税関の人によれば約500人とのこと。

対象はシンガポールの企業なので、全て英語で行われました。日本語でも緊張するのに、英語でのスピーチとなるとそれ以上に緊張です。おかげで用意したメモをただ読んでいるような感じになり、なんだかパッとしないプレゼントなってしまいました。。。。

とはいえ、日本人が来て米国輸出管理についてプレゼンするのは珍しかったからでしょう。セミナーの最後では、日系企業のシンガポール法人で輸出管理に従事している方や、日本法人の輸出管理で困っている外資企業の方などなどからお話をお伺いすることもでき、有意義な1日となりました。
あと、良かったのは以前勤務していた会社のシンガポールの友人たちも偶然このセミナーに参加しており数年ぶりに再会できたこと。これは嬉しかったです!

セミナーではやはり聴講者としてではなく、スピーカーとして参加する方が自分のためになります。
今年は主に海外でのセミナーにプレゼンターとして話をする予定が多くありそうです。

2010/01/22

4月から全輸出者にCPを義務付け???

今日、海外の私の友人からある質問を受けました。それがちょっと日本の輸出管理に関して間違った情報でしたのでコメントしておきました。ある超大手のコンサルティングファームのTrade Bulletin ですが、日本の輸出管理動向に関して以下の文章が書いてありました。

Implementation of internal export control compliance programme (CP) requirement for all exporters

Under existing practice, only exporters who wish to obtain bulk export licenses are required to submit a CP to the Ministry of Economy, Trade and Industry for approval.
However, in the revision of the Japanese Foreign Exchange and Foreign Trade Law (FEFTL), effective from 1 April, 2010, all exporters will be required to implement CP...... (以下省略)

最近の外為法改正をきちんとフォローしていらっしゃる方ならすぐにお分かりかと思いますが、確かに今年の4月1日から、輸出者等遵守基準が、外為法第55条の10に基づいて実施されます。
しかしながらこれは全ての輸出者にCPを義務付けるわけではありません。あくまで守るべき基準を示しただけで、それを守らずに目に余るようなら指導・助言・勧告・命令と進んでいくわけですが、この文書を書いた人は、CPと遵守基準を少し混同しているようです。

また普通に考えればすべての輸出者にCPを義務付けてMETIに届出をさせるなんておかしいと思わなければいけません。外為法の第1条の「目的」である「対外取引の自由、必要最小限の管理又は調整」と齟齬をきたしそうですし、輸出に実質的に政府の認可が必要な発展途上国のような管理貿易になってしまいます。実務的に考えても本当にすべての輸出者にCP届出が必要となると、METIの窓口業務が破綻してしまいそうです。

これを読んだ海外の私の友人は、全輸出者にCPを義務付けなんて本当か? インパクトが大きすぎない?って聞いてきました。きちんと説明しておきましたが、超大手のコンサルなのに日本の輸出管理のニュースに関しては少し内容がお粗末すぎるなあと感じました。
とはいえ、人間誰でも間違いは必ずあります。私自身もセミナーやブログで間違ったことを言うでしょう。反面教師にしたいものです。

2010/01/21

認定輸出者自己証明制度について

今日は経済産業省の方から、原産地証明の認定輸出者自己証明制度についてお話をお伺いする機会がありました。

この制度は昨年2009年9月からの日本スイスEPAの導入により開始された制度です。

簡単に説明すると、EPAの特恵税率を適用するためには原産地証明書が必要ですが、日本ではこれを今までは日本商工会議所にて発行していました。(これを第3者認証制度と言います。)

これを輸出者が自社で発行する制度です。これにより証明書発行の毎の手数料とかリードタイムや手間が少なくなります。ただし初期登録の登録免許税として9万円がかかります。また有効期限は3年間なので更新が必要です。その更新手数料が5,000円必要です。ですので認定資格として半年で8回以上の実績が要件となっています。とはいえ利用件数が多くて申請が度々の企業にとっては朗報です。
もちろん違反や虚偽の申請があればペナルティがありますのでコンプライアンスをしっかりすることは重要です。

EUが締結しているFTAではこの制度は広く取り入れられています。日本スイスEPAは、日本が始めてヨーロッパの国と結んだEPAなので、この制度を初めて採用したのでしょう。
この制度の概要と手続きはMETIのweb site にとても綺麗な資料があるのでご覧下さい。

http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/epa/html2/2-torikumi3-switzerland.html

すでにこの認定輸出者の資格を取った企業さんは、数は多くはありませんが、実際にいらっしゃるそうです。

また、METIとしてもこの制度は広く活用を進めていきたいそうですので、今後締結されるEPAにも採用されることを期待しましょう。


2010/01/20

外為法の行政制裁

1月19日付けで経済産業省より、外為法に違反して北朝鮮に輸出した人に行政制裁の輸出禁止(16ヶ月)が科されたニュースリリースが出ました。この外為法第53条に基づく行政制裁は、違反した貨物のカテゴリー・輸出先だけでなく、全地域・全貨物が対象になりえますので、輸出企業にとっては第69条の6の罰金・懲役よりも怖くてインパクトがあると思います。
http://www.meti.go.jp/press/20100119002/20100119002.html

今回発表された行政制裁は「同法第53条第1項及び第2項に基づき」とあります。第1項と第2項の違いは要約すると以下のようになります。

第53条第1項: 第48条1項(貨物の輸出)の違反で最大3年間の輸出禁止
第53条第2項: 前項に規定する以外の貨物の輸出入の違反で、最大1年の輸出禁止

なので、通常、安全保障上の無許可輸出(第48条1項)の行政制裁なら第53条でも1項だけですが、今回は北朝鮮へのタンクローリーの輸出(大量破壊兵器キャッチオール違反)だけでなく、中古車やピアノの輸出も違反でした。
タンクローリーの輸出は外為法第48条1項(輸出貿易管理令第1条の”許可”を取らなかった違反)で、
中古車やピアノは、第48条の第3項(輸出貿易管理令第2条の”承認”を取らなかった違反)となります。

もし承認をとらずに輸出の行政制裁(この場合中古車とピアノなど)だけなら最大1年ですが、今回はタンクローリーが第48条1項の違反なので最大3年まで、で、結局16ヶ月(1年と4ヶ月)ということになりました。

輸出管理を勉強するときは、METIからのアナウンスの、第xx条の第xx項に基づいて、をよく理解して読むと法令の正確な理解に役立ちます。

2010/01/18

米国のFirst Sale ルール

米国の”Washington Tariff & Trade Letter" 1月4日号によれば、"First Sale" 評価ルールは産業界がクレームしたほど実際には使用されていない、という記事がありました。
これだけ読んでも話の背景を知らないと??な記事です。この話の経緯は以下のようになります。

米国のFirst Saleルールとは、1996年から採用されたルールで、ちょっと乱暴な説明ですが、こんな感じです。米国の輸入者が貨物を輸入する際に、実際に輸入者が最後の売り手に支払う価格ではなく、製造者が例えば仲介者に支払う価格を米国への輸入申告価格とし、故に関税が安くなる、というルールです。

例えば中国の工場で作られ米国へ輸出される貨物を、中国の製造主から直接買うのではなく、日本の商社を通じて米国の輸入者が買うケースです。実際には日本の商社は仲介コミッションを得るので中国の製造主が売る価格 (First sale) は安いはずです。日本の商社に支払う価格 (Last sale) ではなく、 このFirst sale 価格を基準に関税をかけるというやり方です。もちろんいくつか満たすべき条件はあって、販売は独立当事者間価格 (an arm's length price) であり、貨物が直接米国へ輸出されるとかあるのですが、米国の輸入者にとっては関税が安くなるので良い話です。

このFirst sale ルールを廃止しようという話がCBP (Customs and Boarder Protection)から2008年1月に出されていました。ところが米国の産業界は、これを廃止すると関税が高くなり輸入コストが上昇するので、当然ですが反対大ブーイングの嵐です。それで2008年8月にはいったんCBPはこの話を引っ込めることになり、一方、米国議会は暫くどのくらい実際に使用されているのか統計をとって観察しよう、という命令を出していました。

ここでITC (International Trade Commission) が昨年12月23日付けのレポートで、そのFirst sale ルールの実績を発表しました。それによると2008年9月から2009年8月までの間の統計では、First sale ルールを使った輸入者は全米で23,520の輸入者のみで、これは全体の8.5%だそうです。また、金額ベースでは2.4%に留まり、クレームの声が大きかった割には実際の数字はそんなに大きくないね、という話です。First sale 反対者の多くは、関税率の比較的高い製品であるアパレルや靴を扱う業者や小売業界です。この話が今後どう進展するのかcustoms compliance の立場から非常に興味がありますので注視していきたいと思います。

2010/01/15

環境と貿易

昨日は、「環境と貿易に関するシンポジウム」を聴講してきました。
企業の実務家にとっては環境と貿易といってもまだピンとこないかもしれません。
しかし環境問題はWTOでもプライオリティの高い事項であり、専門家の方々を巻き込んで真剣な議論がなされています。将来的にどう貿易実務に関連してくるのか、いくつか実例とその問題点をあげます。

  • 環境製品と関税: 環境に良い製品の関税を撤廃あるいは安くする。環境に悪いあるいはCO2排出の多い製品の関税を高くする。これは環境保護の方向性には合致する政策ですが、実務的にどうするのかは非常に頭の痛い問題です。何を基準に環境に良い製品と悪い製品を識別するのか? CO2排出の多い国の原産品は関税を高くする? エコフレンドリーな製品の性能やスペックで関税を決めるのか? 環境関連の用途やプロジェクトに使用されるなら既存製品も関税を安くするのか? ある国で環境関連で補助金が出たら、その国からの輸出製品に対して相殺関税を課すことを認めるのか? 悩みは尽きません。
  • Carbon Leakage (炭素漏出): 排出規制が厳しくない地域に産業が移転してしまうこと。結果として地球全体の排出量が増加する可能性もあります。現在は税金が安い国に産業が移転することはよくありますが、同様にサプライチェーンが環境規制によって影響を受けることも考えられます。
  • HS code も定期的に改正があり、前回のHS2007の改正はちょうど3年前になりますが(オヤジになると時間が過ぎるのが早いので)記憶に新しいところです。WCOのアナウンスでは次回は2012年です。ここでもモントリオール議定書の ozone depleting substancesのsub-heading が新たに追加されることが決まっているなど、環境問題はHS classification の変化にもつながっていくでしょう。
まだまだ国際的な枠組みをどう作るか議論がされている段階ですので、すぐに実務でどう対処するとかいう話ではありませんが、将来を見据えて気長にwatching していきたいと思います。

2010/01/14

Voluntary Self-Disclosures

Voluntary Self-Disclosures ("VSD")という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。
違反した場合の自主開示のことで、輸出管理の世界では、特に米国で、多く見受けられます。

VSDの概要についてはBISのweb site に出ています。BISも、企業で違反があって認識した場合には、このVSDを推奨するという立場です。これによりペナルティもかなり減額されることになります。(BIS affords the submission of a VSD "great weight" in assessing and mitigating the penalty)
http://www.bis.doc.gov/complianceandenforcement/index.htm#vsd

実際にはVSDを提出しても全てがペナルティというわけではないようです。
(FY2005の例: 全体の97%は違反なし又は警告書ですみ、内訳は55%が違反認定なし、42%が警告書のみ)

ペナルティとなってしまった場合の事例も企業名・金額と共に公開されています。この数字を分析してみると、どのくらいVSDによってペナルティ金額が減額されるのか様子がわかります。実際に支払った金額とそのケースでのMaximum ペナルティの金額を比較してみました。

  • FY2007: ペナルティ17件で、VSDにより平均でMaximum ペナルティの33%まで減額
  • FY2008: ぺナルティ12件で、VSDにより平均でMaximum ペナルティの37%まで減額
  • FY2009: ペナルティ17件で、VSDにより平均でMaximum ペナルティの19%まで減額
    (2009年の数字が低いのは1件だけ3%まで減額されたケースがあるからです。これを除いた16件の平均では平均34%となります。)

一般的にVSDによってざっとペナルティは半分になると言われてきましたが、過去3年分のケースを分析すると、概ね平均30%台ですので、それは裏付けられたと言えるでしょう。もちろんケースバイケースであり、VSDにも関わらずMaxの96%のペナルティがあったケースもあります。これはイラン向けという案件の機微度、知りながらに違反した、かつVSDで嘘や不正確な証言をしたことなどが原因です。

さて日本の輸出管理でのVSDはどうなっているのでしょう? 私の知る限り、米国のような数字の統計は経済産業省からは出ていませんが、ガイドラインはあります。

http://www.meti.go.jp/policy/anpo/kanri/jishukanri/main.html
(不正輸出の通報関連  の 安全保障貿易に関する不正輸出の審査手続き pdf )

日本でも内部監査等に基づく自主的通報は、処分又は調査内容において、何らかの考慮はされるようです。経済産業省の事後審査に協力的か否かも、処分決定の考慮要因となります。

2010/01/13

Asean-India FTAの発効とその特徴

Asean-India Free Trade Agreement ("AIFTA")が2010年1月1日から発効しましたことは、年末年始に新聞紙上にAsean-China FTAやAsean-Australia New Zealand FTA などと一緒に取り上げられることが多かったので、概要はご存知の方が多いと思われます。

Asean はChina, Korea, Japan, India, Australia New Zealand とFTAを締結済み、そしてEUとも交渉中であることから、まさにAseanを中心に各経済圏と関税削減を行っていることで、グローバルな物のやりとりを計画する上で、今後ますますAsean はサプライチェーンのハブの役割を担うことになります。
AIFTAによりタイとインドの間で、関税品目数ベースで80%、貿易金額ベースで75%の品目の関税が即時撤廃され、2013年から2016年にかけて対象製品の関税をゼロにします。
一方、一部の農産品を含む489品目は関税削減の対象外となっています。

日本の新聞紙上では一般的な知識だけの報道ですが、ここではAIFTAの少し実務的な情報をAsean-Japan EPA ("AJCEP")との比較を交えて載せてみます。

  • 現在の発効国: アセアンの10カ国全部で発効しているわけではありません。2010年1月現在では、AIFTAはシンガポール・タイ・マレーシアと、相手国のインドのみです。その他の国は国内法令の準備が整い次第、ということになります。ちなみにAJCEPでは、2009年12月では、インドネシアとフィリピンを除いた他の国ではすでに発効しています。
  • 原産地証明書: 第3者証明方式で、フォームAIという証明書が必要になります。ちなみにAJCEPだとフォームAJですので、FTA協定によって原産地証明書のフォームも異なるので注意が必要です。発行機関は各国の公的機関で、例えばタイではタイ国際貿易局です。
  • 原産地ルール: 一般ルールはRegional Value Content (RVC)でFOBの35%で、HS code 変更基準だと 6桁の変更 Tariff Sub-Heading (CTSH) です。(ちなみにProduct Specific Rules (PSRs)はまだfinalize していないとのこと、そんな悠長なことでいいのかな?) AJCEPだとこの一般ルールは、RVC40% or HS code 変更4桁のCTHと異なっています。なので、もしタイで作った同じ製品でも、適用するFTAで一方は原産地資格OK, 他方はダメということもありえてしまいますね。
  • "Third party invoicing" や"Back-to-Back CO"の規定あり。これはAJCEPも同じ規定が存在します。ただしBack-to-Back COは国によって発効基準が違うことがあるので発行国に確認が必要。多くの国では税関の監督下にない限り発行はしない運用ですが、シンガポールは若干弾力的な運用で、通関後の貨物でも実施的な変更がない限り、Back-to-Back COを発行しているそうです。AIFTAでも同様な運用になると思われます。

2010/01/12

武器輸出の適用除外トリビア知識?

本日1月12日付のニュースで、防衛相が武器輸出三原則の見直しの為に政府内で議論に前向きな姿勢を示した、という内容が伝わっています。武器輸出三原則は、たとえ自社の製品や技術が武器とは関係ないにしても、輸出管理担当者の知識としては知っておくべき事項でしょう。

武器輸出三原則とは? (外務省HP)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/arms/mine/sanngen.html

経団連からの武器輸出三原則見直し提言 (2009年7月)
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2009/064.html

原則や方針は上記URLを読めばわかることですが、輸出管理ライセンスマネージメントの為に、以下少し実務知識の補足です。

武器は輸出貿易管理令別表一の1項に該当します。またその技術は外国為替管理令別表1項で規制されています。どこの国に輸出するにしろ該当製品や技術は経済産業省の輸出許可が必要になります。ただし現在はこの武器輸出三原則の立場から、返品や修理の為の輸出以外は原則、申請しても許可が下りない運用がされているはずです。

また通常、輸出規制は該当製品・技術でも適用除外で輸出許可不要になるケース(使用目的や金額など)があるのですが、こと武器の1項に関してはそれが原則ありません。製品の除外特例を規定した輸出貿易管理令第4条でも冒頭に、「ただし別表1の1の項の中欄に掲げる貨物については、この限りではない。」とありますし、技術の除外特例を規定した貿易外省令第9条でも一般企業が使えそうな特例はほとんど告示で1項の武器は「除外の除外」となっています。

ただし、1項の武器でも外為法の輸出許可適用除外ができるケースもあります。それは日本駐在のアメリカ軍とその関連機関です。これは常識で考えれば、そりゃそうだろって感じですが、ちゃんとその法律的な裏づけをきちんと指摘できる人は少ないと思います。

その法的根拠は、「日本国とアメリカが週国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う外国為替令等の臨時特例に関する政令」です。これを略して通称で「臨特令」と呼んでいます。

物品の輸出に関してはここの第10条で、合衆国軍隊とその関連施設(軍隊の構成員、軍属、その家族、軍人用販売機関等、軍事郵便局、軍用銀行施設及び契約者等)は外為法第48条の輸出貿易管理令・輸入貿易管理令の義務又は制限を免除する、とあります。

また、技術の輸出に関しては、この臨特例第9条で、外為法第25条第1項の義務を免除する、とあります。(実はこの”技術の”輸出のアメリカ軍による除外特例、つい最近の2009年8月14日に改正で付け加えられています。これは昨年の外為法の改正に合わせて外為令を改正したのと同じタイミングでした。つまりそれまではアメリカ軍による技術輸出は外為法上の適用除外ではなかったわけですね。うっかり忘れていたのでしょうか?)
http://hourei.hounavi.jp/hourei/S27/S27SE127.php

と、色々と書いてきましたがこの臨特令、アメリカ軍関連の仕事をしていない限り、日本の一般企業の輸出管理では関わる人はほとんどいらっしゃらないでしょう。知っていても何も役に立たないトリビアな知識ということで。。。

2010/01/08

アフリカのニジェール - ほとんど禁輸国扱い

DDTCから昨年末に出たアナウンスで、アフリカのニジェール向けのITAR輸出ライセンスはおそらく発行されないか、とんでもなく長ーく時間がかかるのでご留意を、とあります。

http://www.pmddtc.state.gov/licensing/documents/CI_Niger.pdf

ニジェールは今まで特に禁輸国・制裁国でもないし、国連武器禁輸国でもありませんでした。
今回は現職大統領が自身の任期を伸ばす為に憲法の改正を目論み、それに伴う混乱に対するアクションだそうです。

日本でITAR品目を扱ってDDTCのライセンスを必要とする方はかなり少ないと思いますが、ニジェールにはご注意を。

2010/01/07

輸出管理の法令集の改訂版がついに発売に

輸出管理に携わる人なら(ほぼ)誰でも持っていると思われる法令集の改定版がついに今月1月25日に発売になります。

安全保障貿易管理関連貨物・技術リスト及び関係法令集【改訂第15版】
http://www.cistec.or.jp/publication/shoseki/a02_houreisyuu.html

ようやくというか、すごく待ち望んでました。というのは、現行の14版は平成20年5月発行です。
それ以来、通常兵器キャッチオール規制、外為法の改正、リスト規制の改正などなど多くの改正が続き、その度に追補版や個別事項の解説本で補ってきましたが、ようやく1冊の本にまとまりそうです。

とはいえ、今年4月1日のリスト規制改正はこの本に反映されるはずもなく、それは次回にってことですね。
リストの改正はほぼ毎年ですのでこれは宿命と思い受け入れるしかありません。。。

2010/01/06

同僚が米国商務省のAssistant Secretaryに

筆者の勤務している会社の米国ワシントンオフィスのパートナー弁護士で、筆者と共に輸出管理の仕事をしていたケビン・ウオルフ氏が米国商務省のAssistant Secretary, Export control administration のポストに任命されました。たぶんBIS (Bureau of Industry and Security)の輸出管理の仕事ですね。
ホワイトハウスのweb site にも先月正式に発表されています。

http://www.whitehouse.gov/the-press-office/president-obama-announces-more-key-administration-posts-121709-0


ケビン氏はオバマさんの選挙戦のときから熱心にサポートをしてました。オバマさんと一緒に取った写真とか(最初はお笑い芸人のノッチかと思いましたが・・・)オバマさんの演説を裏舞台から撮った写真とかをFacebookにアップしています。昨年、東京に来て一緒にディナーを共にしたときに嬉しそうに見せてくれました。雨の中でのオバマさんの演説の写真が結構かっこいいです。
オバマさん応援の甲斐あって、見事に自分の専門を生かした商務省の重要ポストに就任です。

ただし個人的には彼と今までのように一緒に仕事をできなくなるのではないかと、ちょっと残念ではあります。きっと商務省の方の仕事が忙しくなるでしょうから!

2010/01/05

米国の関税評価基準はFOB

ちょっと気になることがあって米国の関税法について社内の資料を調べていました。
そこでおやっと思った記述がありました。それは・・・

Entry of Goods - Valuation
Transaction value is the price actually paid or payable to the seller, excluding international freight, insurance and other CIF charges, plus following ・・・

あれ、including じゃないの?つまりCIFベース。日本の関税評価基準はCIFベースで課税ですよね。
excluding ってことはつまりFOBベースに課税ってこと? でもその他の加算要素の説明は日本のと一緒だぞ。

あとで少し調べたらFOBが基準だってJETROのweb site にも書いてありました。

http://www.jetro.go.jp/world/n_america/us/trade_03/

そういえば忘れていました。確かオーストラリアの友人がうちはFOB基準に課税だよって言ったいたのを思い出しました。アジアのたいがいの国がCIFベースで課税だと認識してたので、どの国もそうなんだとついうっかりしてました。反省。

(追記: 1994年の関税及び貿易に関する一般協定第7条の実施に関する協定で以下の通り定めてあります。
この第8条第1項で、「・・・課税価格の決定にあたっては (中略) 現実支払い価格に次のものを係る額を加算する。」 ここで、仲介料、容器、包装、金型、ロイヤルティやライセンス料などありますが、第2項で「各加盟国は、自国の法令の制定に当たり、次の費用の額 (中略) を課税価格に含めるか含めないかについて定める。」 ここに (a) 輸入港までの運送費用や (c) 保険に係る費用 とあります。
なのでこれをもとに、各国で課税基準がFOBなのかCIFなのか違ってきます。

2010/01/04

香港の輸出管理リスト変更

昨年の11月13日に香港では輸出管理品目リストの変更が発表されました。これはワッセナーの2008年12月の合意品目やAustralia Group,MTCR, NSGの改定を自国リストに反映させる改定です。
これが今年の2月4日から実際に適用されることになると年末に発表がありました。
ほぼ同様の改定はEU, US EARではすでに2009年内に実施スミ、日本でもほぼ同様の改定が今年の4月1日から施行される予定になっています。

ところで海外の友人でグローバルヘルスケアカンパニーでTrade compliance をやっている人からこの香港のリスト改定に関して2B352のUpdateは反映されてるの?って質問がありました。
2B352って何でしょう? これはAustralia Groupで輸出管理品目として合意された品目で生物・化学兵器の製造にも転用できる製造装置関連品です。具体的には発酵槽、遠心分離機、凍結乾燥器などなどいかにも北朝鮮が欲しがりそうな装置で、日本の輸出貿易管理令では別表1、3の2項にリストされています。

この友人が私に聞きたかったのは、Austrial Group で最近合意され、EUとUSで昨年すでにリスト改正された、2B352.d.1.b.2の以下の変更が香港のリストであるかないかでした。


2B352
(Old) – only b.1
d.1.b.1. Capable of being sterilized
or disinfected in-situ;

(New) – b.2 is added.
d.1.b.1. Capable of being sterilized
or disinfected in-situ; or
d.1.b.2. Using disposable or singleuse
filtration components.


日本の省令(第二条の二、四)では同様部分が以下のようになる予定です。
”クロスフローろ過用の装置であって、次のイ及びロに該当するもの・・・(中略)・・・
ロ、次の(1)又は(2)に該当するもの
(1)定着した状態で内部の滅菌又は殺菌をすることができるもの
(2)使い捨ての部分品を使用するもの

日英両方ともそれぞれ太字の部分が改正部分です。ようは使い捨て部分品が新たに規制対象に加わったということです。
これはAustralia Group の合意なので参加国はそれぞれ各国の国内法令に反映させるはずです。
(注:香港は正式には参加国ではないが、ほぼ同様の規制を持っている。)
ところがこれ、2B352のこの部分の改正がなぜか香港の今度の改正リストには載ってないんですね。
それで友人が私に聞いてきたわけですが、その主な理由は、香港は輸出管理規制品目は輸出時だけでなく、輸入時にもライセンスが必要になる変わったルールを持っているのでグローバルにモノをやり取りする企業は香港のリスト改正はたとえ香港からの輸出がなくても気になってしまうわけです。

香港のリスト改正部分抜粋の記述を何度見ても2B352が載ってないんですね。
http://www.gld.gov.hk/cgi-bin/gld/egazette/gazettefiles.cgi?lang=e&year=2009&month=11&day=13&vol=13&no=46&gn=226&header=1&part=0&df=1&nt=s2&newfile=1&acurrentpage=12&agree=1&gaz_type=ls2


なんででしょう。何かお気づきの方がいらっしゃったらコメント頂ければ幸いです。

(追記)ここで言いたかったのは、レジームの合意内容の国内法令への反映は、国によってあるいはレジームや項番号によって、違いが出てくることがありますので、必ず項目ごとにケースバイケースで確認をすることが大事です。

2010/01/01

はじめに

筆者は主に外資系企業でトレードコンプライアンス(Export control & Customs compliance)に携わってきました。日本の企業では安全保障貿易管理とか関税コンプライアンスなどと言われている分野です。

日本の企業ではこの分野は主にIn House で自社の正社員が行っていますが、外資系企業ではリソースの問題でTrade compliance manager はいても少人数、又は全く手付かずの企業も多いのが現状です。また、ビジネスの規模が小さいとフルタイムで専門の正社員を雇う余裕もありません。あるいは外国人のExpatriate がLegal counsel として業務の一環で見ているという形も多く見受けられます。
ですので必要に応じてLaw firm やConsulting firm にアウトソースする形態が合理的です。

また、日本の企業も海外のマーケットに出て行けば、現地では外資企業になります。その際には日本の本社で社内で得られていたような情報やサポートも、日本にいる時のように簡単には得られません。
そんなときも各国のローカルの専門コンサルタントにサポートを依頼するのが賢い方法です。

現在、筆者は米国のLaw firm の東京オフィス代表として、主に外資系企業への輸出管理コンサルティングサービスを提供しており、その経験や日々の学びをブログにアップし、少しでも多くの方々にトレードコンプライアンスの重要性を知って頂きたいと思い、このブログを開始しました。

ブログなので思いつくままに気づいたことを日々アップしていきます。ちょっと長めのTwitter ぐらいに考えて下さい。
感想や質問などありましたらコメント頂ければできる範囲でお答えします。
それではよろしく御願いします。