2010/01/18

米国のFirst Sale ルール

米国の”Washington Tariff & Trade Letter" 1月4日号によれば、"First Sale" 評価ルールは産業界がクレームしたほど実際には使用されていない、という記事がありました。
これだけ読んでも話の背景を知らないと??な記事です。この話の経緯は以下のようになります。

米国のFirst Saleルールとは、1996年から採用されたルールで、ちょっと乱暴な説明ですが、こんな感じです。米国の輸入者が貨物を輸入する際に、実際に輸入者が最後の売り手に支払う価格ではなく、製造者が例えば仲介者に支払う価格を米国への輸入申告価格とし、故に関税が安くなる、というルールです。

例えば中国の工場で作られ米国へ輸出される貨物を、中国の製造主から直接買うのではなく、日本の商社を通じて米国の輸入者が買うケースです。実際には日本の商社は仲介コミッションを得るので中国の製造主が売る価格 (First sale) は安いはずです。日本の商社に支払う価格 (Last sale) ではなく、 このFirst sale 価格を基準に関税をかけるというやり方です。もちろんいくつか満たすべき条件はあって、販売は独立当事者間価格 (an arm's length price) であり、貨物が直接米国へ輸出されるとかあるのですが、米国の輸入者にとっては関税が安くなるので良い話です。

このFirst sale ルールを廃止しようという話がCBP (Customs and Boarder Protection)から2008年1月に出されていました。ところが米国の産業界は、これを廃止すると関税が高くなり輸入コストが上昇するので、当然ですが反対大ブーイングの嵐です。それで2008年8月にはいったんCBPはこの話を引っ込めることになり、一方、米国議会は暫くどのくらい実際に使用されているのか統計をとって観察しよう、という命令を出していました。

ここでITC (International Trade Commission) が昨年12月23日付けのレポートで、そのFirst sale ルールの実績を発表しました。それによると2008年9月から2009年8月までの間の統計では、First sale ルールを使った輸入者は全米で23,520の輸入者のみで、これは全体の8.5%だそうです。また、金額ベースでは2.4%に留まり、クレームの声が大きかった割には実際の数字はそんなに大きくないね、という話です。First sale 反対者の多くは、関税率の比較的高い製品であるアパレルや靴を扱う業者や小売業界です。この話が今後どう進展するのかcustoms compliance の立場から非常に興味がありますので注視していきたいと思います。

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